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    tenni_idol

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    tenni_idol

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    糖度高めの現パロ雑利(♀)

    輝く夏の太陽に照らされながら都内に聳え立つ摩天楼。
    最上階の一室で雑渡はノートPCに向かって文字を打ち続けていた。
    休日だと言うのに仕事の緊急対応に追われ昼からスマホ片手にノートPCとずっと向き合っている。
    ずっと画面を睨んでいたがタンッと強めにEnterを押し、持っていたスマホを机の上に置いた。

    「はあ〜…ひと段落…」

    一人暮らしをするには広すぎるリビングダイニングの大きなソファで大きく伸びをする。
    と、カチャと扉が開く小さな音がし顔を向けた。

    「お邪魔してます…」

    恋人の利子がお泊まりのためにいつもより少し大きめのバッグにビニール袋を手に提げて忍び足で入室してくる。
    利子には仕事の対応がしていると伝えていたので気を遣ってなるべく音を立てないようにしてくれていた。
    彼女にはスペアの鍵を渡しているのでいつでも部屋に入ることができる。

    「ちょうど今終わったところだよ」
    「本当ですか。よかった」

    この子とは前世でも恋仲にあり、今世でもまたこうして巡り合い交際に至った。
    再会から交際に至るまで利子からのアプローチは大変強引…熱烈なものであったがそれはまた別の話。

    利子はビニール袋を持ってキッチンの方に行くと冷凍庫に物を詰めていった。
    雑渡もキッチンの方へ行き飲み物の用意をする。

    「何を買ってきたの?」
    「アイスを買ってきました。食べたくなっちゃって」

    パタンと冷凍庫の扉を閉めると冷蔵庫の扉を開けて茶の入ったボトルを雑渡に渡した。
    ボトルを受け取りグラスに注いでいく。

    「アイスならいつものがまだあるけど」
    「いつもの一箱何千円のやつもいいですけど、たまには百何十円のアイスもいいですよ。あとで食べましょうね」
    「うん」

    注ぎ終わったボトルを利子に渡しグラスを持って二人でソファの方へ戻った。
    雑渡と利子二人並んでソファに座るが雑渡はずるずると体勢を崩していき、利子の膝に頭を乗せる。

    「お疲れですね」
    「んー…うん…」
    「ちょっと寝ちゃっても良いんじゃないですか?」

    利子が優しく雑渡の頭を撫でる。

    「んー……」

    せっかく来てくれた利子を置いて寝ることはしたくないなあという己の意思に反して瞼は閉じていく。

    「おやすみなさい」

    ───家主のいない古い家で人知れず肌を重ねる。
    雑渡は知人の大切な息子と、利吉は四つの小隊を束ねる組頭と秘密の関係を持っていた。

    『今、寝てたでしょう』

    鼻先がくっつくほどの近距離で横たわる美しい青年がくすっと笑う。
    互いに忍務を終えてすぐ逢瀬に使用している古家で落ち合い、激しく睦み合ったのだが、ほんの一瞬意識を飛ばしたのを見破られていたようだ。

    『お疲れですね』
    『受け手の方が体力を使うだろうに君は元気だね』
    『体力には自信がありますから。少し休まれてはいかがです?』

    私が見張っておきますからと利吉は雑渡の頭をそっと撫でる。
    思いの外忍務で体力を消耗していたか、撫でられる心地よさに意識が遠のいて行く。

    『おやすみなさい』

    ───利吉の言葉にはっと目が覚めた。
    彼と想いは通じ合っていたが、「好きだ」と想いを伝えることは終ぞなかった。
    ぼんやりとそんなことを考えていると頭上から声が降ってくる。

    「おはようございます。と言ってもまだ30分ほどしか経ってませんけど」
    「ああ…でもおかげで頭がすっきりしたよ。ありがとう」

    利子にお礼を言い身を起こす。
    カーテンの無い大きな窓を見れば陽が少し傾き空はうっすらとオレンジがかっている。

    「夜ご飯…というにはまだ少し早いか。どうする?」
    「アイス食べましょう、アイス!」

    利子は立ち上がり跳ねるように冷凍庫に向かい、アイスの袋を持って戻ってきた。

    「それは…」

    利子が持ってきたのは繋がっている二つのアイスを半分に割るタイプのものだ。
    袋を開けアイスを分けると、そのうちの一つを差し出してきた。

    「はい、雑渡さんの分です…食べたことあります?」
    「あるある。もう十五年ほど前だけど」
    「わあ随分前ですね。このアイスもそんなに長いんだ」

    そう言いながら手で揉み込んで解凍していく利子。
    雑渡が受け取った方はアイス同士を繋ぐ接合部がついており、そこの中にもアイスがぎっしり詰まっている。
    雑渡も同じようにアイスを手で揉みながら溶けるのを待つ。

    「さっきは食べたくなったって言いましたけど、本当はこのアイスが食べたいというよりも貴方と分け合って食べたいなって思って」
    「そうなの?」

    不思議そうに利子を見つめると、利子が少し恥ずかしそうに続ける。

    「再会した時には雑渡さんはもう大層な富豪で私は与えられてばかりでしたから…分けっこしたくなっちゃって!まず手始めに安価なアイスからと」

    そう言うと顔を真っ赤にして口をつぐんでしまった。

    「ありがとう、嬉しいよ。これからもっといろんなことを分かち合おう」
    「…!ええ、そうしましょう……なんだかプロポーズみたいですね」
    「本番はもっとちゃんと用意するから」

    赤く染まった顔ではにかむ利子に、雑渡は微笑み返した。

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