朝のひばりが歌うまで「……、……バデーニさん」
最期の時が来るまでを過ごすにはあまりに暗く寒々しい牢の中で、其処を満たす陰鬱な沈黙に耐えかねたオクジーが口を開いた。
しかし、オクジーの隣で俯き、美しい金色の貝と化したバデーニは応えない。それでもともう一度名前を呼べば、錆びた機械のようにぎこちない動きながら、バデーニは漸く顔を上げたのだった。
「……」
二人の間を、気まずい沈黙が流れる。常ならば一方的とも思えるペースでバデーニが語り、オクジーがそれに相槌を打つ事で会話が進行していた。しかし今、バデーニは重く口を閉ざしたままだ。
オクジーは焦った。夜が明ければこの命は終わりなのに、一蓮托生として過ごして来たバデーニと何の言葉も交わさずに終わるなんて、と考えたのだ。
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