私の願い 郭紫白狼山での戦いが過ぎ、元化や紫鸞。みんなのおかげで郭嘉は一命を取り戻した。
「ここは……。」
目を覚ますと、薬品の匂いがツンと鼻を通った。
ふと、右手に違和感があった。
「……無名…殿……?」
郭嘉の手をぎゅっと握り、眠っていた。
モソモソと体を動かすと、紫鸞が目を覚ました。
紫鸞は郭嘉が目を覚ましている顔を見て安堵した。
「もしかして…ずっと私のことを…?」
郭嘉がそう言うと、紫鸞は首を縦に振った。
目の下にはうっすらと隈ができていた。
ちょうどその場に元化も来た。
「目が覚めましたか、郭嘉殿。紫鸞殿がそばを離れないと言ってて……俺は止めたんですけど……。紫鸞殿。ちゃんと寝てください?ろくに寝てないでしょう。」
元化の文句を素直に受け止め、紫鸞は横で眠った。
「はぁ……世話が焼けますよ本当に……。
あぁ。郭嘉殿。後で紫鸞殿に礼を言ってください。いつ目を覚ますのかってずっと、心配してましたから…。」
「ふふ…無名殿らしいね…。まったく…。」
「じゃあ。俺は他の患者を見てくるので、何かあったら呼んでください。では……」
そう言うと元化はその場を後にした。
__
本当なら、白狼山で死ぬつもりだった。だけど、天はそれを許さなかった。不条理だ。
衾をギュッと握りしめる。私の願いは、儚く散った。
そっと医務室を抜け出し、外に出ると、雪が降っていた。
「美しいな…雪は……。」
手のひらに落ちた雪は、すぐに消えてなくなってしまった。
その光景をじっと見つめる。
「私は…まだ生きている…。」
__
後ろからいきなり抱きしめられた。
「おや…。寝たはずじゃなかったのかな…?」
紫鸞が抱きしめていた。
「だめ…。」
その手は震えていた。
「ふふ…そんなに焦らなくとも、私はもう何処へも行かない…。」
震える手を掴み紫鸞を安心させる。
「…戻ろう。」
郭嘉はあぁ。と頷き、部屋に戻った。
__
「すっかり体が冷えてしまったね…。」
再び、褥へと戻り、横になる。紫鸞を手招きし、近くへと来させる。
郭嘉は紫鸞の腕を引き、自身の体の中に収めた。
「無名殿は暖かい。冷えきった私を、暖めてほしい…。」
紫鸞は首を縦に振った。心臓の音がドクドクの聞こえてくる。
「ふふ。そんなに緊張しなくても…貴方をとって食べたりしない。今はただ…私を暖めてくれれば……それでいい。」
そう言うと郭嘉は再び眠りについた。
紫鸞も郭嘉の行動に安心して、つられて眠った。