『指先』『温度』「面影、ありがとう」
「うん、もう大丈夫だね。良かった」
「お前の処置が速かったおかげだな」
「殺れ殺れ、もう探索中に無理はしないでね」
先日、探索中にうっかり深めの怪我を負った澄野だったが面影の手当が迅速かつ適切であったため大事にならずにすんだ。怪我の治りも速く、今こうして面影の自室で見てもらった限りでは(やたらと触診がしつこかったが)もう完治したといっていいだろう。
「また、お前に助けられたな。ありがとう」
澄野は面影の手をとり感謝を告げた。
「この手には何度も助けられたな……」
「でも、この手は…命を幾つも奪ってきた手だよ。侵校正も、部隊長も……そして人間も、ね」
「それでも、俺にとっては……」
澄野は慈しみをこめて、面影の指先にキスを落とした。突然のことに面影は頬を赤らめ驚いてしまう。
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