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    haru72akihuyu

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    haru72akihuyu

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    自転車に乗って(じゅ、ゴとゲの学生時代)

    ##じゅ

     日差しが眩しくて少しだけ目を細めた。私は今、片側一車線の道路をコンビニへ向けて自転車で下っている。後ろに五条悟を乗せて。
     人里離れた山の中にある学校から最寄りのコンビニまでは、どんなに頑張っても三十分はかかる。明日になれば任務で山を降りるのに、悟はどうしても行くのだ言って聞かなかった。今日発売の漫画を読みたいのだそうだ。
     まあ私も暇を持て余していたから、コンビニへ行くことに特に異論はなかった。悟が素知らぬ顔で私が跨る自転車の荷台に座ったこと以外は。
     一言文句を言ってやろうかと口を開いた私は、けれど無邪気に笑う悟の顔を見てすぐにそんな気を無くしてしまった。ペダルを漕ぎ出すと身体全体に風を受け、しばし暑さを忘れる。
    「いいねいいね、涼しいね〜」
     私の肩にあごを載せてだらしなく喋る悟はご機嫌だ。と、いきなり脇から前かごに手を伸ばされバランスを崩してしまう。
    「こら悟、危ないだろ」
     体重をかけられ、思わず前のめりになって自転車を止めた。前かごから取り出したペットボトルを傾ける悟を軽く諌めるも、返ってきたのはのんびりとした鼻歌だけ。
     まったく悟は自由だ。私は一つ息を吐いて再度ペダルを漕ぎ出した。



    「はい、帰りは悟が漕ぐんだよ」
     コンビニから出た私は素早く荷台に手を置き、前に座るように促した。
    「え〜、聞いてないよぉ」
    「君は行きも帰りも私にペダルを漕がせるつもりだったのかい?」
    「うん」
    「それはフェアじゃないな」
    「人生は常に不公平だ」
     もっともらしい顔をして言うから吹き出してしまう。悟は山の方を見、すぐにその表情を憮然としたものに変えた。
    「っていうか帰りの方が大変じゃん。お前、最初っからそのつもりだったろ」
    「ふふっ」
     大げさに頬を膨らませた悟は、それでもサドルに腰を下ろし私を振り返る。
    「ほら行くぞ」
    「うん」
     背中合わせに腰掛け荷台に掴まる。強く蹴り出した悟はぐんとスピードをあげた。
    「坂でバテるなよ」
    「ふんっ、誰に言ってんの」
     鼻を鳴らした悟が笑った気配がする。確かに。君の体力は底なしだ。
     背後から吹いてくる風が前髪を揺らす。悟に背中を預け、過ぎる景色に目をやる。日に日に深くなる山の緑。空には幾筋もの飛行機雲。風に揺れるタチアオイの花。
     もうすぐ夏が来る。
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    haru72akihuyu

    TRAINING自転車に乗って(じゅ、ゴとゲの学生時代) 日差しが眩しくて少しだけ目を細めた。私は今、片側一車線の道路をコンビニへ向けて自転車で下っている。後ろに五条悟を乗せて。
     人里離れた山の中にある学校から最寄りのコンビニまでは、どんなに頑張っても三十分はかかる。明日になれば任務で山を降りるのに、悟はどうしても行くのだ言って聞かなかった。今日発売の漫画を読みたいのだそうだ。
     まあ私も暇を持て余していたから、コンビニへ行くことに特に異論はなかった。悟が素知らぬ顔で私が跨る自転車の荷台に座ったこと以外は。
     一言文句を言ってやろうかと口を開いた私は、けれど無邪気に笑う悟の顔を見てすぐにそんな気を無くしてしまった。ペダルを漕ぎ出すと身体全体に風を受け、しばし暑さを忘れる。
    「いいねいいね、涼しいね〜」
     私の肩にあごを載せてだらしなく喋る悟はご機嫌だ。と、いきなり脇から前かごに手を伸ばされバランスを崩してしまう。
    「こら悟、危ないだろ」
     体重をかけられ、思わず前のめりになって自転車を止めた。前かごから取り出したペットボトルを傾ける悟を軽く諌めるも、返ってきたのはのんびりとした鼻歌だけ。
     まったく悟は自由だ。私は一つ息を吐いて再度ペダル 963

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