次は、あなたのそばに生まれることが出来ますように。これは、まだ世界が魔法界と呼ばれる前の物語。
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珍しい髪色と美しい容姿から最高神に気に入られて大きくなったら番にされるフィンくん。
気まぐれで天界から降りてみたら子供レインに見つかって道を聞かれる。珍しい自分の同じ髪色のレインに一瞬驚くが、特に気にしないようにして静かに道の方向を指差すとおずおずとお礼を言われてレインは立ち去ろうとしていた。
フィンも立ち去ろうと思ったらレインが足に怪我をしていることに気づく。いつもなら放っておくのに、なぜか治してあげてしまった。「髪色が同じだからかな。」と思いつつ、静かにその場を立ち去ろうとすると、その似た色の目をまん丸にして「きれい、、、」っとレインは呟いた。
今まで「珍しい」「素晴らしい」とかは言われてきたけど、「綺麗」と言われたのは初めてだったフィンはそこでレインに興味を抱き始める。
その後逃げるようにその場を離れたフィンだが、レインの事が忘れられなくて、またしばらく経って地上に降りてみた。
そしたら子供だったはずのレインはすっかり大人になっていて、フィンのことは見えなくなっていた。
「人間はすぐに大きくなっちゃうんだな」
それでフィンは諦めて帰ろうとする。
しかし、なぜか、、、
なぜかまた目が合った気がした。
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それからレインをよく見に行くようになった。ずっと見てた。
天使は人を平等に愛さなきゃ行けないため、一人の人に恋をするという感情を知らない。
既にフィンはレインに恋をしていたがフィンはまったくそれに気づかなかった。
子供たちから「兄様」と呼ばれていたフィンはレインの名前を「にいさま」だと思った。
兄様が屋敷の後継になった。
兄様がお見合いをした。
兄様が結婚した。
兄様がおじいさんになった。
兄様の奥さんが亡くなった。
兄様は1人になった。
一人、うさぎを毎日世話している姿を毎日見ていた。うさぎの前だと少し綻ぶ顔がかわいいなとか、真剣な表情が素敵だなとか。
あと少しでフィンは最高神と番になって神の子を産まなければいけない。
今までは当たり前のこと、だったはずなのに。
もやもやとした感情が初めて自分の中に芽生えていることに気づいた。
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番の儀式が行われる中、これからもう兄様の様子を見に行けないな。と思った。
すると、なぜか今まで一度も流したことの無い涙を流していることに気づく。
なんで。
天使は天使を辞めることが出来る。
正しくはやめさせられる。
それは人に恋をしてしまった時。
誰か一人でも特別に扱うと天使としては認められず、翼を切られ、長ければ長いほど良いとされる髪を切られる。
儀式を拒否したことでフィンは天使の座を追われ、全てを切断された。天使として死んだ。
救われた、と思った。もう二度と、兄様には会えないけど、それでいいと思った。ずっと、見ていられた自分は幸せだな。
でも、最後に、、最期にもう一度だけ、「綺麗」
って言ってもらいたかった。
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最後の力を振り絞ってレインの屋敷に向かった。
体はすり抜けるので、簡単にレインの部屋に入れた。
兄様も、事切れる頃合だ。
最期に一目見たいと思った。
部屋に入ると兄様は眠っていた。シワが増えても綺麗な寝顔に手を添えて、額にキスをした。
自分もそろそろだな、と力尽きる時、兄様と、レインと目が合った。
あの時のような、時が止まったかのような。
一瞬驚いた顔、そしてすぐに優しく微笑んでくれた。ああ、僕は。ずっと、ずっとその目で見て欲しかったんだ。
「、、、ずっと、そばに居てくれただろう?」
「、、、ッ」
「姿は見えなかったが、ずっと傍にだれかいる気がしたんだ。それが、あの時見た天使のような人だったことも。分かってた。」
「俺は人生で1度しか恋をしなかった。小さい頃に見たお前がずっと忘れられなくて、、、、やっぱり、綺麗だな。」
「ッ、、ふっ、、うう、、、」
涙が止まらなかった。さっき流した涙とは違う、優しい、暖かい気持ちになる涙だった。
レインは少し苦しそうな顔をした。フィンの怪我に気づいた。
「、、、次は、絶対に守る。お前の1番傍に近い存在なって、お前を守る。誓う。」
力強かった。その表情にあっけに取られていると、唇を奪われる。満たされる感覚。体の体温はもうお互いほぼないのに。
その口付けは、暖かかった。
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レインの妻は優しく、気立ても良かったが、妻との間に子供は生まれなかった。
レインのファーストキスはフィン。
最期のキスがお互い今世の最初で最後。
妻とキスはしたことが無い。跡継ぎの子供を両親に求められたが、授からなかった。
レインのうさぎはレインが息を引き取った次の日、レインの親友が引き取りました。