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    waichan000

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    waichan000

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    占祖(身体の関係はありますが完全に祖の片思いです)
    性描写はほとんどありませんので18禁にはしていませんが、ヤることヤってますのでご注意ください※R15 ※

    祖の独白
    ずっと時系列に淡々と語ってるだけです
    占が死ぬ描写はしっかりあります

    ※書きたいことをだらだら書いてるので小説と呼べるほどのものではないです
    ※先日書いたネックレスの話を掘り下げただけ
    ※喧嘩と殺し合いはセックスだと思ってます。

    俺は、占の手が好きだった。

    大きくて、温かくて、まるでこの世界で唯一、俺だけに触れるためだけに存在しているみたいだった。
    冗談を言い合うときも、そっと慰めるときも、いつだってその手は優しく、俺を包み込んだ。

    けれどある日、右手の甲に蠍の刺青を見つけた。
    黒々と、肌を食い破るように這うその蠍は、占が雷に自らを捧げた証だった。
    占は何も話さないし、俺も「何故だ。」なんて、訊けなかった。
    訊いたところで、欲しい答えは得られないのだから。
    その右手は、もう俺だけのものじゃない。その現実だけで十分だった。



    その夜も、占は変わらず俺を抱いた。

    暗い部屋の中で押し倒され、肌と肌が貼りつくたび、蠍の刺青が俺の身体をなぞった。
    背筋をなぞる感触に、びくりと身体が跳ねる。

    占は背後から覆いかぶさり、熱を帯びた腰を、ぐっと押しつけてきた。
    尻にあたる感触にいつもなら集中していたが、今日はできない。
    俺の右手に、占の右手が重なって刺青の刻まれた掌が、俺の指を絡め、離さない。
    そこから蠍の毒が、肌を、骨を、内側からじわじわと蝕んでいく。


    「──阿占、阿占……」
    掠れた声で名前を呼びながら、俺は必死に助けを求めた。
    それでも、占は逃がしてくれない。蠍を纏った右手が、俺を押さえつける。
    熱に浮かされるように、身体を震わせたその時。
    代わりに、左手が、そっと頬に触れた。
    蠍の毒に灼かれた俺を、まだ穢されていないまっさらな左手が包み込む。
    指先で、そっと髪を梳き、痺れきった背中をなだめるようにやさしく撫でた。

    その手だけは、まだ、誰のものでもなかった。
    何も刻まれていない、俺だけの、占の左手。

    苦しくて、掠れて、呼吸もままならない俺を、その左手だけが、救い上げる。
    右手に縛られ、左手に癒される。占は、俺を壊しながら、同時に救おうとするのだ。
    俺の左手に、占の左手が重なる。指先で、ぎゅっと握り返してくる。まるで、「ここにいる」とでも言うように。
    身体の奥で疼く、毒のような熱。それを占は、左手だけで、必死に鎮めようとしてくれていた。

    ──この手だけは、俺のものだ。

    占の隙を見つけては、左手を捕まえ、頬を寄せた。体温に耳を澄ませるたび、まだ俺に残されたその手に、ほっと息をつく。指を絡め、唇をよせる。その時だけは、占とずっと一緒にいられるような気がしていた。
     
    ──そんな小さな救いも、すぐに奪われた。

    ある夜、阿占は左手の薬指に指輪をはめて現れた。安っぽい銀色のそれが、やけに眩しく光っていた。

    「似合うだろ?」
    阿占はいつものように、気軽に笑った。
    誰か別の女のものになったことを、隠す気すらない顔だった。

    それでも、その夜も、占はかわらず俺を求めた。

    シーツの上、重なり合いながら、占の左手が俺の髪を撫でる。
    昨日まではなかった指輪が、耳元をかすめる。
    なまぬるい肌の熱の中で、金属の冷たさだけが異物みたいに浮き上がった。

    いつもみたいにその手を握ってすがりたかった。

    ──けれどもう、あの左手は俺だけのものじゃない。

    指輪に触れるのが怖くて、代わりに阿占の首に手を伸ばした。

    指先に触れたのは、細く頼りない鎖だった。占がいつも首にかけている、金のチェーンネックレス。

    震える指で、そっと鎖をたぐる。占の体温を吸い込んだ金属は、まるで占そのものみたいだった。
    細い鎖ごと、阿占の命を抱きしめているような錯覚に眩暈がした。

    熱を帯びた鎖は、占の律動に合わせて、かすかに揺れる。
    ぬるい呼吸と、滲んだ汗の匂いと一緒に、身体の奥深くにまで、占の痕跡を刻み込んでいく。
    逃げられないように揺れるそれを必死で捕まえて、震える手で、ぎゅっと握りしめる。
    指の腹に食い込んだ金属が、ぎしりと皮膚を裂く。痛みも構わず、さらに力を込めた。

    この細い鎖だけが、まだ俺と占を繋ぎとめているそう思った瞬間、占の腕が俺の体をきつく抱き寄せた。
    腰を引き寄せられ、深く、深く満たされる。なんてひどい男なんだ。

    胸に広がるのは、愛情なんかじゃない。ぐちゃぐちゃに濁った、救いようのない痛みだった。

    抱きしめられるたび、右手の蠍が目に入る。
    左手の指輪が、なまぬるい光を反射している。

    右も左も、もう、俺のものじゃない。
    その現実が刃物のように突き刺さった。



    *****



    ──あれからも、何も変わらなかった。

    占は何度も俺を抱き、何度もその腕に沈められた。腰を掴まれ、深く沈められ、汗ばむ肌を重ねながら、何度も、何度も。

    何度目かもわからない夜を繰り返しながら、それでも、まだここにいた。

    夜になると、占はいつものように俺の部屋にやってきて、無言で俺を押し倒した。
    まるで何も変わっていないかのように、指先で、腕で、体温で、俺を確かめた。 

    蠍の右手も、指輪の左手も、俺を縛りつけるように滑っていった。背中を這い、腰を掴み、爪を立てるようにして、逃がさないように抱きすくめる。 

    占のすべてが、もう他人のものだと知っていた。俺には、何ひとつもらえるものなんてないと、ずっと分かっていた。それでも、占に触れられるたびに、熱を流し込まれるたびに、息が詰まるほど嬉しかった。

     
    好きだった。

     
    蠍を持ち、指輪をはめた、このままの占が、どうしようもなく、好きだった。

    何ももらえなくたって、俺から何も与えられなくたって、どうしても、離れられなかった。

    揺さぶられる体を支えようと、俺は今日も占の首へと腕を回した。






    *****




    自分よりも小柄な、細い身体を腕の中に閉じ込め逃がさないように腕の中にしまいこんだ。
    片脚を絡めて、もっと近くへと引き寄せる。
    占の胸に頬を押しつけながら、背中を撫でた。
    まるで、いつも占がしてくれるように、占を抱きしめ、触れ、支配していた。
     

    今日は、全部俺のペースだった。
     

    好きな場所に触れて、好きな形で抱いても、占は何も言わず黙って俺に身を委ねてくれている。


    ──だから、忘れてしまっていた。


    返ってくるはずの息がないことに。
    引き寄せても、もう腕を回してくれないことに。
    触れた唇が震えることがないことに。

    占の身体は、ただ静かに沈んでいた。
    「阿祖」と優しく呼びかけるときと同じ顔で、静かに俺の腕の中に沈んでいる。

    まだ暖かい汗ばむ肌だけが、俺を騙していた。
    生きているふりをして、俺に縋りついているみたいに。


    すっかり癖になっていた

    無意識に、占の首元に手を伸ばしす。
    助けを求めるみたいに占の首元をくつろげて”俺の”鎖を探しだす。
    胸の奥で、まだ微かに温もりを探しながら金のネックレスにそっと触れた。
    指先に伝わる感触はひどく頼りなかったけれど、それでも俺はすがるように握りしめた。


    震える手で、ネックレスの留め具を外す。
    カチリ、と小さな音がして占の首からそれがすべる。


    俺の手の中でキラキラと光る金色のそれをそっと自分の首へと導いた。

    喉元に落ちる鎖は、思っていたよりも冷たくて、そこに占はいなかった。
    ただ、ひんやりとした、無機質な金属だけが俺の喉元で揺れている。

     
    右手も、左手も、心も。
    何ひとつ、俺のものにならなかった。
    占のすべてが欲しかったわけじゃなかった。
     
    それでも、気がつけば、俺は欲張りになっていた。
    ふたりで生き延びる道があるんじゃないかなんて考えるべきじゃなかったのに。

    隣にいたくて、触れていたくて、名前を呼ばれたくて。
    それだけだったのに。
    こんな形でしか、占を手に入れられなかった。
    冷たくなった身体を抱きしめながら、それでも、今腕の中に占がいることを嬉しいと思ってしまう自分を救いようがないなと自嘲気味に笑う。

    「阿占…」


    そっと、占の耳元に唇を寄せる。

    これまで一度も、伝えたことがなかった言葉。
    誰かのものだった占にはどうしても言えなかった言葉。

    呪いのようなその言葉を震える声で、囁いた。



    「──愛してた」



    それだけだった。
    たったそれだけなのに、声が掠れて、涙が滲んだ。
    ただただ占の顔を涙で濡らしながら俺は痛いほどに占を抱きしめてなんどもなんども呪いの言葉をつぶやいた



    どれだけそうしていたのか、わからない。
    気づけば、占の身体は、すっかり冷たくなっていた。
    先ほどまでのぬくもりは消え、まるで凍りついたみたいに、硬く、重くなっていた。


    義兄弟の元にもどって、占の願いを叶えなければならない
    愛しい占を床に横たえ「このネックレスを俺にくれ」と、返事がないのに懇願した。


    せめて、この鎖だけは。
    占を繋ぎとめた、この細い輪だけは──
    そう願いながら、首にかけたままのそれを、ぎゅっと握りしめた。

     

    指に絡んだ鎖から、じわりと熱が伝わる。
    喉元に落ちた金属の冷たさが、少しずつ、溶けていく。

     

    気づけば、ネックレスは、俺自身の体温を吸い込み始めていた。

     

    ──まるで、俺が阿占に取り込まれていくみたいに。
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