【夏五】見えない楔 そういえば今日の星座占いは最下位だった。穏やかな声で告げられた内容はろくに覚えちゃいない。BGM代わりに流していたテレビで、番組もそろそろ終わりという頃に必ず始まる短いコーナー。右から左へ流していたのに、最後の部分だけをやけにはっきり覚えている。
「本日のラッキーカラーは、紫です!」
へぇ、じゃあ景気付けに茈でもぶっ放そうか、なんて[[rb:冗談 > ひとりごと]]を口にしながらテレビの電源を消して、時間通り、真面目に、お仕事へ出かけたのである。
今日の目的地は隣県にある小さな寺だった。観光地の片隅にありながらも観光客もほとんど訪れない静かな古刹だ。
境内へ続く階段の両脇にはびっしりと紫陽花が植えられていて、年に一度梅雨の時季だけ賑わうと聞いたが、今は木々の葉っぱも全て落ちてしまう肌寒い季節である。名物の紫陽花も丸裸になり、むき出しの細長い枝が四方八方に伸びているだけだ。
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