Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    まかさ

    @zzolzzol_1206

    前垢消えた……

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 3

    まかさ

    ☆quiet follow

    ……やっぱ似てるよな、とか考えんのはやめといた。
    重ねて見んのは絶対違うし、なにより知られてまた機嫌損ねんのは御免だし。

    ※あかうた成立前。
    ※信乃と暁寧たゃがなかよし。
    ※あか←しのはあくまでドデカ友情。
    ※暁寧たゃが予備学科 (事実陳列罪)

    まだ未熟な『友達』をしていた。 9月中旬。毎年億劫に感じているあの炎天が、ようやくそろそろ鳴りを潜める時期…………だと、認識していたのだけど。
    さっきからじりじりと照りつけるこの日差しはとても秋のものとは思えない。幼少の頃を思い返したってこの時期は涼しかったはずだし、むしろ少し肌寒かった記憶さえある。それがどうしてこの数年でここまで変わるんだろう、いろんな理由が思い浮かぶけど、でもきっと全ては世界が狂っているからだ。私ではなく、世界が狂っている。
     そう、悪いのは全部私ではなく、私を取り巻く最悪な世界の方。だから今こうして校門の前で待ちぼうけを食らっているのも、私以外の全部が悪いということ。
    「…………はあ、こんなことなら先に帰ればよかった……」
     夕暮れ時の沈みきる前の太陽を急かしながら、考えるのは彼のことだった。本校舎の方に用事があると言って私を待たせている、彼。少しだけだからすぐ戻ると言い残して早数十分。……何の用事かは知らないけど、さすがに待たせすぎなの。
     彼は私なんかよりよっぽど知人が多くて、そのくせに私を友達にするような変なヒトで、お人好しで、予備学科のくせに本校舎の方に知り合いだっている。
    「だけど……そのために佐伯を放っておくなんて、いい度胸してるの、ね」
    戻ってきたらどうしてやろうか、そんなことばかり考え出す。
    まさか戻ってこないかも、なんて心配は……あんまりない。世話焼きでお人好しで物好きな彼はどうせ私のことを見放せないし、何も心配することはない。……………心配することなんて…………

    「____信乃!」
     待っている間にすっかり人けがなくなった校門前に、聞き覚えがある……むしろ、待ち疲れていた声が響く。
    「アカネ、くん…………」
     ぼ考え事をしていたせいか、ようやく望んでいたヒトがやってきたというのに少しだけ呆けてしまった。
    ……? それどころか、意識がぼんやりしてなんだか頭がくらくらしてきた気がする。気づいたら喉だってとっても渇いてるし、とにかく、あつい……。
    「って、うっわ! おま、めっちゃ顔赤……つか熱中症とかじゃねーの!? 水分は……んな長袖でこんな日向に突っ立ってるからだろバカ!」
    「…………バカって言ったほうがバカ、なの。それにアカネくんが待たせるのがわるい……もん……」
    「いや、おっまえ…………だから先帰っていいって、」
    「今日はいっしょに帰るって言った。……言った、でしょ」
     はあ、アカネくんはわかってない。本当にわかってないよね。
    ……でも正直、彼が私のためにあたふたしてる姿が面白かったから、もうあんまり怒ってないのが本音。
    今だって、鞄から新品のお茶を出して飲ませてくれたし……こういうときいつも準備が良いのはなんでなんだろう。彼のことだから、たぶん偶然なんだろうけど。

    「…………遅かったの、なんで?」
     そう聞いたのは、ただの気まぐれ。彼をここまで手間取らせた正体が純粋に気になったからっていうのもある。
    ……だったんだけど、それを聞いた瞬間の彼が飲んでいたスポーツドリンクを吹き出しそうなくらいの勢いで噎せたから……一気に、疑惑の目を向けることになったのは、仕方ないと思うの。
    「何?」
    「んっ、あー……別になんでもねーけど……」
    「何でもない反応じゃない、けれど?」
    自然を装って目を逸らす仕草
    「…………途中で三崎先生に絡まれて雑用押し付けられてたんだって、あの人そういうとこあんじゃん? そんで遅くなっただけ」
    「ふーーん…………で、それだけじゃない、でしょ」
    「……そんだけだって」
    「白々しい……佐伯の目を見てから言って」
     彼は話すつもりがないようだけど、何かを隠していることなんて佐伯にはバレバレなの。
    だって、彼がさっきまでいた場所は本校舎……もとい、この才能に満ち溢れた生徒が集う特別な学舎。彼はさながら狼の巣に迷い込んだかわいそうな羊さんなの。
     予備学科はただでさえ下に見られてる、何かされてたっておかしくないし…………まあ、端的に言えば、心配してあげてるの。一応。
    「…………いじめられたなら正直に言ったほうがいい、のよ? 笑ったりとか、しないし」
    「は、はぁ!? いじめ……!? なんでそうなったわけ!?」
    「アカネくん、そういうの隠す、でしょ。あの先生に頼まれごとされただけにしては長すぎるし……」
    「ちがっ、誤解だし! それは“詩乃“が…………あ、」
    その名前は私にとって少し予想外で、白熱しかけていた空気が凍った。
    ……口走った瞬間、即座にやべ、とでも言わんばかりの顔になる彼は、相変わらず私のことをよくわかってくれているようでなにより…………わかった上で目に見えた地雷を踏むだなんて、本当に面白いヒトなのね。アカネくん。
    「ふーん……ふーーーーん………………ウタノお兄さんが、ね……」
    「あー……いや、マジで悪かっ……って、つーか今のはお前も悪いだろ……!?」
     自分で言わせた事実は知らんぷりして、アカネくんにお茶のペットボトルを投げてから、小言が飛んでくる前にそそくさとそっぽを向いて歩き出す。あーあ、心配して損したの。

    ____佐伯詩乃。私の実兄で、超高校級の演劇部。
    ああ、そういえば最近アカネくんにちょっかいかけてるらしいって聞いてたっけ……なるほど、なるほどね。合点がいった。
     大方、私が兄のことを毛嫌いしてるからって思ってあえて言わなかったんだろうけれど、わざわざ言わせたのも私だけれど、…………でも佐伯と約束してるときに兄と過ごしてたのも事実だから、ちょっとくらい不機嫌になる権利はあると思うの。
     本当にどうしてくれよう、この男。後ろで若干ばつが悪そうにしながらついて来る彼を横目にすたすた歩いて考える。
    ……兄が強引で彼を困らせるなら、私だって彼を困らせていいでしょう。少しくらい我儘を言ったって許されるはず。だって私達、友達だから、彼が私を構わないのが悪いもの。そうでしょ?
    だからこれから後は私との時間にして、って言うのも、許されるはず。
    「…………この前教えてくれたアイスクリーム、小さい箱のやつ」
    「はっ? ……いや、あー……」
    「どうするの」
    「…………わかったわかったって、買えばいいんだろ。別にいーけど……つーかちゃっかり高いやつ選んでるし…………」
     仕方ないな、とでも言いたげな雰囲気はむかつくけど、及第点くらいはあげるの。アカネくんは私の優しさに感謝したほうがいいのよ。
    ……なんて、本当は一緒に過ごす口実が欲しかっただけ、今日はたくさん付き合ってもらうんだから。
     でもそんなこと言うのは癪だから絶対言ってあげない。変わりに、そう、反らしていた視線を体ごと彼に向けて微笑んだ。
    「んふっ……それなら、ゆるしてあげる」

     さっと一風変わった風が吹いて、互いの髪が靡く。
    あ、今の風、ちょっと秋っぽかった。涼しくて……ああ、そろそろ日が沈む時間だから。
    アカネくんの方に視線を移すと、何故か呆けたような変な顔をしたあと、慌てて何かをかき消すように首をぶんぶん振っていて……変なの。でも、アカネくんが変なのは今に始まったことじゃないから特に気にしない。
    「う……上から目線…………だし、なんか失礼なこと考えてる気がするんだけど……?」
    「アカネくんが変なのがわるい、の。それに……予備学科の分際で佐伯の上に立とうとするなんて百年早いの、よ」
    「……いやおま、それ……!!」
     アカネくんはまだ何か言いたそうだけど、またくるっと振り返って先に歩いてやるの。だって、どっかの誰かさんが時間を無駄にしたせいで貴重な放課後が削られちゃったし、早くお店にたどり着きたいんだもの。
     ほら、早くしないと置いていっちゃうのよ。
    ……なんて少し横柄かな、そんな態度をとっても、いつだって彼は付いてきてくれる。
    そんな様子がなんだか少しこそばゆくて、それでいて嬉しかった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭👏👏👏❤❤❤🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works