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    ことこと

    @to_ko_01

    自カプ最高いえーい

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    ことこと

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    ※私の方が先に好きだったのにネタ
    ※1~100までモブ視点 自我強め
    ※着地点が分からず供養
    ※モブが龍水に向けて殺意を持った所がサビです
    ※誤字脱字チェックしてないので、見つけても無視してくれると助かります

     石化前の世界で私はちょっとしたカリスマ美容師だった。SNSのフォロワーは万ぐらいは普通にいたし、有名なモデルのカットも担当したりした。働いていた美容室では、私の指名で予約はいっぱいだった。若いからとごく一部の先輩からはやっかみを受けてはきたけれど、それにもへこたれずに実績を積み重ねて、私は徐々に周囲から認められていっていた。なのに、汗水垂らし時には酒に溺れながらも、こつこつと努力して築いてきた、私の美容師人生は石化とかいうわけのわからない光で、全てがぱあーになってしまった。
     獅子王くんが私を石化から復活させたのは、あさぎりくんからの助言があったかららしい。身だしなみを整える子がいたら、心に少しでもゆとりが出来るでしょとのことだ。そうして、復活した私は顔面国宝と一部界隈で崇められている獅子王くんと、マジシャンとして活躍している芸能人のあさぎりくんを目の前にして、無論、ドッキリを疑った。だって、あさぎりくんはまだ何かのアニメのコスプレとして通用する服を着ていたけど、獅子王くんやその他の人達は、歴史の教科書で見た原始人みたいな格好をしていたのだから。
     パニクって周囲を見渡す私は、直ぐにここがスタジオでも何でも無いことに気づいた。だって、私がいる場所は、よく分からない崖の上で、周囲は青空だったのだから。更に着ている服も、私が着ていた服とは全く違う。他の人たちのように、原始人みたいな服のワンピース。意味が分からなくて、私は年甲斐もなくワンワンと泣いた。その時、私を慰めてくれたのは杠ちゃんと、ニッキーちゃんだ。ふたりとも私より歳下だったのに、歳上の私を抱きしめて慰めてくれた。
     ふたりに抱きしめられて、落ち着いた私は、獅子王くんに今の状況を聞いて、やっぱり泣いてしまった。家族とか友人とか、仕事とかみんなみんな無くなってしまったと思うと辛くて仕方なかった。
     本当に本当にようやく落ち着いて、私はふたりから自分が復活させられた理由を聞いた。けれど、納得は出来なかった。正直言って、このまま石化したまま、眠って起きたかった。だって、カリスマ美容師なんて言われていたけど、ハサミや櫛も何もない、こんな原始世界で私の技術はなにひとつ役に立たない。
     出来ることで良いからと説得されて、私は紐を使ってみんなの髪型をセットした。何処のケンシロウ世界だと思ったけれど、皆、これがこの世界に丁度いいと笑ってくれたのが救いではあった。男の子はそれで良かったかもしれないけれど、女の子達を満足をさせる事は出来なかった。いや、私が納得しないと言った方がいい。みんな、髪の毛を洗ってくれるだけでも気持ちいいと言ってくれるけど、触る度に髪の毛の量が増えているのが分かる。石のナイフでは髪の長さの調整は出来るけど、量を空く事は難しかった。せめてハサミがあればなと、弱音を零した先は、私を抱きしめてくれた杠ちゃんだった。
     杠ちゃんは彼氏の大樹くん、それから、獅子王くんの三人はこの世界で、最初に復活した人らしい。だから、数少ない女の子達は、よく杠ちゃんを頼っている。実は3人の他にもうひとり。千空くんと言う子がいたらしいが、もう亡くなったと話は聞いた。千空くんのお墓参りをさせてもらいながら、高校生の子が死んでしまった事実に、私はまた強くショックを受けた。そして、やっぱりこんな世界で目覚めたくなかったと、その夜にまた泣き散らかした。けれど、杠ちゃんも大樹くんも泣き言も言わないで、前を向いて生きている。私の友達や家族は石化から復活したら、もう一度出逢えるけれど、亡くなってしまった二人の友達は、もう二度と戻らない。言葉を交わすことも叶わない。辛くないのって、聞いたら二人は笑って「泣く暇があるなら、死ぬほど働けって言ってくる」と力説してくれた。この二人がいてくれるなら、私も諦めずに進もうと思った。そして、二人が大切にしていた千空くんに私も会いたかったなと思った。
     だから、弱音を零した私に杠ちゃんが教えてくれた事は耳を疑う内容だった。千空くんが生きている。その千空くんは科学王国を築いて、獅子王くんと戦うらしい。はっきり、何で千空くんと獅子王くんが戦うのか意味が分からなかった。仲良く出来ないのと、聞けば杠ちゃんは辛そうな顔で首をふった。千空くんは獅子王くんの若者だけの世界は嫌らしく、司くんは科学の世界で文明が復活するのが嫌らしい。
     復活させて貰った手前、獅子王くんには悪いけれど、私は千空くんが勝って、科学の世界が発展して欲しいと思った。だって杠ちゃんが言ってくれた。千空くんなら科学の力で鋏も櫛も作ってくれるから。

    「杠から聞いた。テメー美容師で、鋏と櫛が欲しかったんだろ」

     千空くんに手渡されたのは、木の櫛と鉄で出来た鋏と梳き鋏。

    「いや〜〜このスキバサミ?何で片方の刃をギザギザにしちゃうの?髪の毛を切るだけなら、もうひとつのハサミって奴だけでも事足りるんじゃないの?」
    「ギザギザの方は名前についてる通り、髪の毛をすく。つまり、髪の量を減らす役割があんだよ。カセキ、テメーのその髭。重てぇなって時はあっか?」
    「うーん、ま、あるのう」
    「その時はどうやって対処してる?」
    「ぶっ格好になっちゃうけど、こう、ちょきんと切っちゃう」

     私の前で生きている千空くんと、カセキと呼ばれた小さなおじいちゃんが何か楽しそうに話している。申し訳ないけど、私はふたりの会話が全く耳に入って来なかった。だって、私の手のひらには櫛と鋏がある。私の大事な仕事の相棒たち。

    「ありがとう……千空くん。本当にありがとう……っ!」

     私はこの世界で復活して、泣き虫になってしまった。カセキさんが私の周囲でオロオロしているから、泣き止まないといけないのに、全く涙が止まってくれない。更に。千空くんが。

    「ククク、テメーに髪を切って貰いてぇって人間は山ほどいるんだ。よろしく頼むぜカリスマ美容師。だから、さっさと誰かの髪でも切って来い。そうしてる内に泣き止むだろ」

     カリスマ美容師と呼んでくれた。カセキさんが泣いてる女の子にかける言葉じゃないと、千空くんに小言を言ってるけど、私は彼のその言葉のお陰で、ようやくこのストーンワールドに自分の、自分だけの居場所が出来たような気がした。涙を拭って、私は千空くんに笑いかける。

    「君が私の初めてのお客様になってよ!」

     私は彼に恋をした。
     ちょろいと言われようが、吊り橋効果と言われようが、何だっていい。彼の真っ直ぐな言葉と、科学の力で私の相棒達を作り出してくれた。理由はこの二つだけど、この二つの理由だからこそ、私は彼を好きになった。けれど、千空くんは恋をしないと言っていたらしい。何でも、恋愛よりも科学やってる方が唆る、彼らしい言い分だ。だから、直ぐに彼が誰かのものになる事はない。私は安心した。なら、私にもまだチャンスはある、そう安心していた。
     新しい復活者、七海龍水。その名は、私もよく知るところだった。彼はあのルックスもあり、ファッション雑誌のモデルを勤めていたから。更に日本で住んでいれば、一度は聞いた事もある有名な財閥の御曹司は、プレイボーイとしても名を馳せており、七海龍水はゴシップ誌もよく賑わせていた。また大物が復活したんだなと私は他人事で見ていた。更にニッキーちゃんが千空くんが勝手に龍水くんを復活させたとのボヤキを聞いて、私は笑った。そうやって、笑えたのはほんの一瞬だけ。
     千空くんと龍水くんは波長がとてもあったのか、ほぼ毎日共に過ごしていた。最初は龍水くんの振る舞いに引いていたのに、気球が出来上がってから、彼等の仲はとてもよくなった。信頼出来る良きパートナーという感じだ。別にそれくらいで私もグチグチ文句は言わない。千空くんを助けてくれる人が増えるのはいい事だ。 
     けれど、アレはダメだ。龍水くん。彼はきっと千空くんに恋をしている。瞳を見れば分かる。彼の瞳は恋をしている人の目だ。千空くんのあの見目とあの頭脳。誰もが手を伸ばしたくなる魅力を持っている。そんな彼を龍水くんが欲しがるのも分かる。
     希少性の原理。あさぎりくんが説明してくれたこの言葉。いわゆる期間限定や、残り一個みたいに特別なものに価値を見出す人の心理らしい。だから、龍水くんにもその原理が働いている。彼は生粋の欲しがりだ。それは知っている。けれど私の知る龍水くんは、ゴシップ誌を賑わしている男だ。何処かのご令嬢と夜会を楽しんだ後は、次の日には別の女性とワンナイトを楽しむ気質。とあるモデルのヘアセットをしていた時話してくれた。七海龍水は女性の誘いを断らない。だから、モデル達の中で龍水を狙う子達が多いことを。
     そんな、魔性な男が恋?しかも、この世界で誰よりも神秘的な魅力を持つ千空くんに、そんな感情を抱くなんて。私のように遠目から焦がれるならまだしも、一番近い龍水がどうして恋をしてしまうの。
     気に食わない。ああ、本当に気に食わない。何よりも私が一番気に食わないのは、そんな龍水の想いを千空くんが満更でもないところだ。科学の方が好きなんじゃなかったの?どうして、そんな男の感情に靡いているの?意味が分からない。君は遠く輝くお星様のように手の届かない場所でいるべき人だ。誰かにものになってはいけない人。

    「貴様が千空に崇拝に近い慕情を抱いているのは知っている」

     殺してやろうか。この男。
     あさぎりくんから龍水の髪を切ってくれと頼まれた。あさぎりくんの頼みと仲介が入っているのが、まず胡散臭い。あさぎり。そうだ、彼は私の想いに気付いてる。そうして、私の想いを、希少性の原理そして、単純接触効果だって言ってきた。なんて、酷い男だろう。彼は神か何かなのか。人の想いに勝手に難しい言葉を当て嵌めて、それは錯覚だと突きつける。なんて図々しい男だ。
     それでも、私はそんな気持ちをおくびに出さず、笑顔で了承した。私はカリスマ美容師だ。千空が認めてくれた。この世界で唯一のカリスマ美容師。そんな私が自分勝手な感情で、お客様を振るいにかけるなんてダメに決まっている。

    「ゲンから、そんなにも分かりやすく気持ちを見せるなと警告された。恐らく、貴様を慮っての忠告だったのだろう」
    「だが、千空は俺の気持ちを迷惑だとは思っていない。むしろ、面白がっている傾向がある。そこで、ゲンの考えも変わった。ゲンは、恋慕が暴発し、千空に危害が及ぶことを警戒した。あれは、女性にすら体力で劣るほどの貧弱さだ……今のように刃物を突きつけられれば、千空は何もできないだろう。まして、異性相手なら特にな」

     私は龍水の首に鉄の鋏を突き付けていた。

    「ゲンは俺にこう言った。穏便に話し合いをつけろ、とな。狭いコミュニティ内での小競り合いは、全体に不和をもたらす。その原因が俺や千空なら、尚更だ」
    「何なのよ、アンタ!!急に現れて!! 千空くんの隣に立って!私は毎日、千空くんと話せやしないのに!なのに、アンタは毎日毎日、千空くんの隣に立って!顔を近づけて、笑い合って!そんなの、ずるい!羨ましい……ずるい!! 私の方が先に復活したのに!!私の方が先に、千空くんを好きになったのに!それなのに……っアンタは、私がしたいことを、易々とやってのける!!ぽっと出のくせに……! 後から復活したくせに!!挙げ句の果てに、恋をして……しかも、受け入れられているっ!」

     私の恋とこの男の恋は何が違う。

    「最初に言っただろう。貴様のそれは、崇拝に近い慕情だと」
    「ちがっ……私は純粋に千空くんを……」
    「本当か? 貴様は、本当に一度たりとも千空に己の願望を押し付けてはいないのか?確かに、千空ほどの知識を持つ者は、そうそういない。科学が最優先なのは変わらないが、それでもアイツは恋を否定しているわけではない。時期ではないと後回しにする。だからこそ、貴様は動かなかったのだろう?」
    「……彼の迷惑になりたくなかった。……好きな人の邪魔をしたくない! これだって、立派な恋でしょう!?」
    「そうだな。貴様のその気持ちも、立派な恋だ。」
    「だったら、貴方が私の想いを崇拝だと決めつけるのは、おかしい!」
    「だが、貴様の恋は、俺の登場によって歪んでしまった。誰のものにもならないと安心していた千空が、誰かのものになるかもしれない。貴様には、それを到底受け入れることなどできなかった。そうして、変わっていく千空を、貴様はまだ認められずにいる……違うか?」

     鋏を持つ手が怒りで震える。
     
    「アンタみたいに、なんでもすぐ行動できるわけじゃないのよ……っ!」

     そんな単純なものでいいの、恋って?動いた方が勝つなんて、そんなシンプルなもので。もし……もし私が先に告白してたら、千空くんは私を見てくれた?

    「そんなっ、そんなの、出来るわけないじゃない。私が、私は……ただの美容師。でも、それだけじゃ、千空くんの役に立てない……!」
    「……科学王国にはカリスマ美容師様がいると、俺に教えてくれた」

     カリスマ美容師。その言葉に私は息を呑んだ。それは、私のアイデンティティそのもの。私の人生で、私が夢見て掴んだ場所。

    「身だしなみなんてどうでもいいと思っていたが、一人でも詳しい奴がいると、それだけで空気が変わると千空が話していた」
    「それと、誰かに頭を洗ってもらうのは、やっぱり気持ちがいいとな。あの瞬間は、久しぶりに3700年前に戻ったようだと、千空も褒めていたぞ」
    「……千空くん」
    「髪も切ってもらって、頭が軽くなった。杠に言われて、なるべく早く櫛と鋏をクラフトしたのは、やはり正解だったなと……その千空が作った道具で、貴様は人を傷付けるのか?」

     私は龍水の首もとに目をやった。微かに血が滲んでいる。大事な仕事道具であり、大切な相棒でもある鋏を使って、私は何をしてしまったんだ。我に返ると同時に、鋏を素早く皮のポシェットへとしまった。
     龍水くんの首周りには、髪を切るための布をかけていた。それが幸いし、私は焦りながらもすぐに止血をはじめることができた。

    「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
    「はっはー!別に俺は気にしないぜ!美女からの傷はいつでも大歓迎だ!」
    「それでも私が自分を許せない。大切な道具で人を傷つけてしまうなんて……っ」
    「フゥン……ならば、詫びとして髪を切ってくれないか?」

     龍水くんが前髪を少し持って揺らしている。

    「少し前髪が伸びて来たから、いい感じに切ってほしい。それと千空が絶賛した貴様のテクニックを俺も堪能したい!」

     瞳を輝かせている龍水くんを見て、彼がまだ20歳で私より歳下であったのを思い出す。歳下の子に私は刃物を突き付けてしまっていたのか。龍水くんと比べて、私は私の幼稚さを恥じる。
     私は石化前で先輩たちの嫌がらせを受けていた身だった。だから、絶対にあんな風にはならないでおこうと思っていたのに。嫉妬や恋の前ではきっと理性なんてものは焼ききれてしまうのだろう。

    「シャンプーもコンディショナーも、ヘアオイルもない。更にドライヤーなんて夢のまた夢だから、自然乾燥で、どうしても傷んじゃうのは仕方ないけど、それでも、今あるもので皆の髪をケアしていくのが私の役目」
    「欲しい……この指さばき。貴様、文明が復興したら俺専属の美容師にならないか」
    「私の手で色んな人の笑顔を引き出したいから、私は美容師になったんです」
    「……自分の仕事を誇りに思っているんだな」

     龍水くんを見送ってから、私はひとり川のほとりで、突っ立っていた。千空くんが彼の想いを、のらりくらりと交わしながら、それでも嫌がらない理由が分かってしまった。
     私は龍水くんのことを傍若無人な人だと勝手に思っていたけれど、その真逆で何処までも冷静で先を見据えてる人だ。私は自分の感情に振り回されてしまったけれど、龍水くんは多分その感情をコントロール出来る人。
     彼と話して分かったことは他にもある。龍水くんはとても安心感がある。ちょっと会話をした私でもそう思ったのだから、ほぼずっと傍にいる千空くんだってそう感じてることだろう。それに、千空くんは以外と抜けている所があるって、杠ちゃんが話していた。だから、きっと、あの二人はパズルのピースみたいにピッタリと、嵌ってしまったんだろうな。
     私が思考にふけっていると、後ろから足音が聞こえて来た。振り向くと、あさぎりくんが手を振りながら近付いて来た。

    「や、ここに。女の子がひとりでいるって聞いてね。心配で来ちゃった」
    「……今回はご迷惑かけてすみませんでした」
    「え〜〜、何の事だがジーマーで僕わかんない……何て、冗談は置いといて。……大丈夫かな。ちょっとは落ち着いた?」
    「私、今……ようやく石化前と同じ気持ちで、人の髪を切れて行けそうだなって感じているんです」
    「鋏も櫛もない状態で復活させちゃって、あの時は本当にごめんね」
    「そりゃあ巫山戯んなとは思ったけど、今は早めに復活出来て良かったなって思ってる」
    「へぇ〜、それは何で?」
    「龍水くんってバックも手に入れたし、この世界でカリスマ美容師って言ったら、先ず私の名前が上がるんですよ!店の名前を何にするか、今とっても悩んでいるんですよね〜」
    「ありゃりゃ、思ってた以上に商魂たくましい。……まあ、そんな君にじゃじゃーん!千空ちゃんからのプレゼントがありまーす」
    「千空くんから?」

     ゲンくんから手渡されたのはブラシだった。指先でなぞってみれば、店でも使っていたブラシの毛ざわりと、とてもよく似ている。

    「これは……猪毛!?」
    「そう、猪。蓄産が始まったからね。ゴイスーな猪の毛も手に入いるようになったわけ」

     猪毛ブラシ。ヘアブラシの中でも高級品に入っちゃう代物だ。この世界。たまに石化前なら高級と分類されるものが、急にコロッと手元に落ちて来ることがあるから、その度に驚いてしまう。

    「こんなの貰っちゃったら、捨てたくても、捨てれなくなっちゃうじゃん」
    「千空ちゃん自身にそんな意図がないからさ。余計に参っちゃうよね。ジーマーで」

     あさぎりくんの言う通りだ。千空くん的にはこのブラシで新しい商売を初めて、ドラゴを稼ぐつもりなのだろう。そして、その営業マンとして私を選んだ。少し値が貼っても、女の子達は積極的にドラゴを払いに来る筈だ。
     認められている。求められている。あの千空くんに。ああ、きっとこんな過剰にも喜び、そして行き過ぎてしまうと、人は崇拝と呼ぶんだな。
     最初は恋だった気がする。それが捻れて、崇拝にたどり着き、そうしてまた恋に落ち着いた。捨ててしまいたい、気持ちもあるのに、なかなか捨てきれない。けれど、近い内に折り合いはつけれる筈だと思いたい。
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    MOURNING※私の方が先に好きだったのにネタ
    ※1~100までモブ視点 自我強め
    ※着地点が分からず供養
    ※モブが龍水に向けて殺意を持った所がサビです
    ※誤字脱字チェックしてないので、見つけても無視してくれると助かります
     石化前の世界で私はちょっとしたカリスマ美容師だった。SNSのフォロワーは万ぐらいは普通にいたし、有名なモデルのカットも担当したりした。働いていた美容室では、私の指名で予約はいっぱいだった。若いからとごく一部の先輩からはやっかみを受けてはきたけれど、それにもへこたれずに実績を積み重ねて、私は徐々に周囲から認められていっていた。なのに、汗水垂らし時には酒に溺れながらも、こつこつと努力して築いてきた、私の美容師人生は石化とかいうわけのわからない光で、全てがぱあーになってしまった。
     獅子王くんが私を石化から復活させたのは、あさぎりくんからの助言があったかららしい。身だしなみを整える子がいたら、心に少しでもゆとりが出来るでしょとのことだ。そうして、復活した私は顔面国宝と一部界隈で崇められている獅子王くんと、マジシャンとして活躍している芸能人のあさぎりくんを目の前にして、無論、ドッキリを疑った。だって、あさぎりくんはまだ何かのアニメのコスプレとして通用する服を着ていたけど、獅子王くんやその他の人達は、歴史の教科書で見た原始人みたいな格好をしていたのだから。
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