妖精妖精(チヒロ視点)
初めて彼女を見た時、妖精だと思った。
10歳の時の俺はバレエについてよく知らなかった。
刀匠だが他のものを作る事がある父さんは、あの頃は委託で何本か包丁を作っていた。
毎週木曜日夕方、学校帰りの俺を連れて車でクライアントの元へ打ち合わせに行く。
父さん達が打ち合わせをしてる間、俺は近くの市立図書館で本を読んだり宿題をしたりして時間を潰していた。
打ち合わせ場所が高級住宅街付近だからか、市立図書館なのに設備は豪華で俺は全く退屈しなかった。
図書館に隣接している公園も魅力的だったが、その時は2月で寒い日が多く、俺はほとんど図書館で過ごしていた。
図書館の窓から妖精が見えた。
図書館の向かいにバレエ教室があった。窓はガラス張りで小学生の生徒達がレッスンを受けている様子が見える。
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