Let's Dance!「ああ、違う、そうじゃなくてだな……」
ドアを開けるなり響いた佐竹の声は、微かな呆れと、それを遥かに上回る多分の愛おしさを含んでいた。
佐竹がこんな風に甘い声音を向ける相手はきっとあのペンギンに違いない。
そう思いつつ歩を進めれば、部屋の奥では佐竹が予想の通りに愛用の赤いスカーフを付けたイウコトキカナイペンギンことアオ君を前に胸の辺りの高さで掲げた手を揺らして見せていた。
「どうしたんですか?」
肩の上で赤いジャケットを羽織ったベテランカワウソのサタケ隊長が様子を伺う様にぐっと前のめりになるのを、決してそんな間抜けな姿を勇に晒しはしないだろうが、それでも落ちてしまいはしないかと気に掛けながら投げかければ、こちらを振り向いた佐竹が小さく肩を竦めて苦笑めいた笑みを零した。
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