主導権 廊下。しかも閉じた扉の前で長く立ち尽くしたくはない。イム・ジソプは腕組みをした指先をいらいらと動かした。
こちらは上官で相手は部下だ。ただし、昨夜醜態を晒した後。だがだからこそきつく口止めしておかなければなはない。そして、口止めよりむしろ礼を言わななければならない。
問題は晒した醜態の中身を覚えていないことだ。正確には記憶はあるが、思い出したくない。酒宴が終わり上官達を送り出し、パク・ボムグと2人夜道に取り残された後。
不愉快な記憶を辿りそうになり慌ててイム・ジソプは顔を上げた。立ったままの廊下の奥から人の気配にままよとドアノブに手を伸ばす。
乱暴に開け放たれたドアに、在室中の2人から同時に視線が飛んでくる。2人分の視線を浴び、ジソプはかろうじて横柄な上官の仮面を繕った。
1967