夜の気配を感じて、鶴丸国永はぱちりと目を開けた。
目覚めの瞬間はいつも、あたたかい膜に包まれていたかのような心地よさの名残と、その満ち足りた微睡みから急に水面へ引き上げられた喪失感を覚える。
ゆっくりと上半身を起こし、どこか肌寒く感じる両手を軽く閉じたり開いたりしながら、鶴丸は自然と隣に視線を向けた。
少し離れたところに設置された寝台の上、柔らかな人工の明かりに照らされて、青年の姿をしたうつくしい刀が静かに眠っている。いつも通りの光景だ。
自分の寝台から降りた鶴丸は、眠る刀の元へそっと歩み寄った。今は固く閉ざされた瞼の向こうへ、囁くように語りかける。
「おはよう、三日月宗近。それから、おやすみ」
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