午後四時過ぎ。
まだ外は明るい時間だが、既に心は今夜の期待に染まっていた。
スーツに袖を通すだけで、背筋が伸びる気がする。
今日の自分は、彼の隣に立つための「最上真」だ。
一ギルドマスターではなく、水篠旬の隣に立てる誰かでありたくて、鏡の前で髪を整える手が、ほんの少しだけ震えた。
・・・・
時間通りにホテルのロビーへ降りると、すでに車は入口に待機していた。
ドアの向こう、車体に映る薄暮の空が滲んで見えたのは、照明のせいなのか、自分の視界の揺れのせいなのか。
ガチャリと車のドアが開いて、彼が現れた。その容姿に僕は目を疑う。整えられた髪、完璧に仕立てられたスーツ、一瞬、本当に水篠旬かと疑ったほどだ。そしていつもとは違うオーラは、彼を一層遠い存在のように見せていた。
4759