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    nike_nkx

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    24.最高潮(R-18)
    カルシチ「来訪者」2の続きです。
    性描写を含みます。18歳以下の方の閲覧はご遠慮下さい。

     夜が更けるにつれて、街路をさまよう怪しい仮装の群れはだんだんと増えていくようだった。
     魑魅魍魎たちは手に手にランプを持っている。ランプは暗い夜道を照らし、行き会う相手の顔をたまさか明るませる。もっともこんな夜にはお互いの素性など詮索しないものだけれど……。もしも仮装の群れに本物の妖怪や魔物が交ざっていても誰も気づかないだろう。
     ランプの明かりはふわふわと鬼火のように流れてゆく。
     

     バラムは小さなゾンビの一団を送り出し、診療所のドアを閉めた。
     そろそろいいか、とホットチョコレートを温める鍋をガステーブルから降ろして火を消す。次から次へと襲来してきたおばけたちもようやく間遠になった。普段とは違うにぎわいでごった返していた診療所に静寂が戻る。
     一年分のおばけを見たな、とバラムはひとり苦笑した。
     本物と見まごう血糊メイクや、完成度の高いコスプレ衣装。思い思いの仮装をこらした子どもたちの中に、狼のフルフェイスマスクをかぶった子がいた。黒光りするフェイクファーの毛並み。まるで映画の小道具のようによくできていた。こちらを振り返った狼男を見て、バラムははっと息をのむほど動揺し――我に返った後でひそかに自分を嘲笑した。ぼくはまったくどうかしている……
     子どもたちが「いたずら」に置いていったどんぐりやお手紙、こまごました差し入れをテーブルにまとめる。ちらばったお菓子もボウルに戻した。チョコレートをひとつ摘んで包み紙を剥く。口に入れると、チョコがけしたりんごのグラッセが柔らかく歯を押し返した。




     ……初めて獣と交わった、昨夜。夢のような夜だった。
     ベッドにあおむけになって、狼にのしかかられた瞬間を、きっと一生忘れないだろうと思う。狼はバラムの頭の両脇に前脚をつき、漆黒の毛に覆われた逞しい体躯でおおいかぶさってきた。体格の良いバラムは普段ならば他人の肉体の迫力に気圧されることはない。けれど、その時は……
     闇に捕らえられた、と思った。
     途方もなく深い闇。闇はどくどくと脈打つ熱をもち、脳髄がとろけるような魅惑的な雄の匂いを放っていた。恐怖と恍惚と絶望と歓喜がごたまぜになって、バラムの理性を押しつぶしどろどろに溶かした。
     抵抗する意志も、恐怖を押しのける力も、根こそぎどこかへ行ってしまって。全身の力が抜けたふにゃふにゃの状態で、バラムはただ身を投げ出していた。まるで肉食動物に牙を立てられるのを待つ獲物みたいな気持ちだ。何も考えられなくなって、うっとりと、ああ殺される、と思った。相手が本物の獣の一族でもまさか知己を殺しはしないだろうが……眠たいせいか意識が混濁する。
     瞳が濡れてしまう。息ができない。ああはやく、たべてほしい、ひとおもいに。
     狼はそんなバラムを組み敷いてかすかに目を細めた。


     舌の熱い肉のかたまりが首すじに押し当てられる。
     濡れた舌の肉がべろりと粟立った肌の表面を移動していった。離れたところからすうと冷たくなる。するとまた分厚い舌が降りてきて、唾液を塗り広げるように首のうしろから胸もとをしつこく行き来した。
     ぴちゃ、ずるる、べろん、濡れた音がする。
     舐めしゃぶられている。そう気づいてバラムはこらえていた熱いため息をついた。肉食獣の口が近づいて、舌が肌のうえをなぞり、うまそうにぴちゃぴちゃと音を立てる。そのたびに体のあちこちに細かな電流が走り、足のつま先がぴくん、ぴくん、とひとりでに反応する。狼には組み敷いたからだの感度など手にとるようにわかるのかどうか。
     狼の前脚がバラムの寝間着のあわせを押さえ、鋭い爪をかけて引き裂くふりをする。
    「わかっ、たから、脱ぐから、破らないで」
     バラムは蝶の幼虫が不器用にからだをくねらせて皮を脱ぎ捨てるように、もたもたと寝間着を脱いではだかになった。そうなってしまえばもう終わりで、後は。
     ぐるる、と狼が低く唸った。
     獣の全身に狂おしい情欲が猛っている。狼は昂ぶる欲情をあえて自ら抑えつけて、引き延ばし、得られるだろう快楽のありったけを時間をたっぷりかけて絞りつくすつもりらしかった。呻り声を洩らしながら、狼ははだかの獲物を眺め降ろして、それから。
     一時間以上、ひたすらバラムの全身をくまなく舐めしゃぶった。



    「……ァーー……あァ……んぁ……」

     早々に声も枯れて、バラムは伸びきった喘ぎ声を洩らすだけの、唾液でびちょびちょのかたまりになってしまった。
     狼は粛々と作業に没頭している。美しい目を伏せて、舌で獲物を好きは方向へ押し転がし、背骨の溝や耳のうしろ、足の指のあいだまでも全身残らず舐めて、唾液をまぶしつける。周到な獣は自分が与えてやったものの代償を取り立てることも忘れなかった。吸わせてもらうぞと言わんばかりに狼は、バラムのからだの、汁が出てくる部分にことさら執念深く口をつけた。裂けた唇、憐れに立ち上がったまま震えている茎、尻肉を割り開いてあらわにするヒクヒクとすぼんだ穴にも。そしてバラムがほとんど意識を飛ばした状態で分泌する汁を、粛々とすすった。
     ひょっとすると狼の一族にとって、舌での行為は、愛撫以上の意味をもつコミュニケーションの一種なのだろうか? 
     性交中の、言葉に代わるような何か。
     愛のささやきや、うわごとめいて呼ぶ相手の名前。そんな言葉に代わるものがあの舌にこもっていたのかもしれない。そういえば狼は耳元を舐める時、とても優しく舌先をタップした。まるで甘い口説き文句をささやくみたいに。そしてバラムがたまらず腰を突き出した時、あやすように臍をべろりと舐めた舌の動きは、さしずめ言葉責めだったのかも。
     いつ終わるとも知れず、延々と舐め回されて。
     バラムは初めて知った。舐める、それだけのことを、気が遠くなるほど長時間続けられれば、からだはいつの間にか柔らかくほろほろにほどけてしまうと。
     結局指一本挿れぬままで、狼は獲物の穴を使いやすくほぐしてしまった。気がつくとそこはふっくらとふくらんで、ぷるぷるにうるんで獣の男根を待ちわびていた。
    「……は……っ……」
     ぐちょぐちょの体を投げ出して、バラムが熱い息をつく。どこもかしこも高められて感じ入っているのは自分だけじゃないだろうか。狼には我慢の限界なんてないのだろうか。
     そんな思いにかられたバラムの腹に、おおいかぶさった狼の下腹部から、たらりと透明な汁がひとすじ、したたってくる。あ、とバラムは声をあげてしずくを垂らしたものに指をのばした。生気にみなぎった樹木のようにごつごつと筋の張った雄の幹にふれる。狼も感じているんだ。そう思えて苦しい息をつきながら思わず笑みを洩らしてしまった。その直後、両脚を押し広げられて、とうとう長すぎる前戯の時間が終わった。
     ようやく貫かれたとき、ほっとした。
     舐めしゃぶられていた時間はどれほど長く? とろ火で焙られるような刺激を延々と与えられ、果てのない気持ちよさに気が狂いそうだった。それに比べれば、ファックの快楽は、もっとわかりやすい――……



     ……振り返れば狼のセックスはとても「立体的」だった、と思う。
     昨夜ほどバラムは尻を高く上げさせられたことはないし、片足を持ち上げられたこともなければ、膝立ちで犯されたこともない。
     セックスであれほど部屋じゅうを使うことも、もうきっとないだろう。ベッドで交わり、床に引きずり下ろされて脚を広げさせられ、その後はカウチの座面に手をついて後ろからのしかかられて犯された。立ったまま。壁と後ろ脚立ちした狼の間に挟まれて尻を割り開かれたときは、押し潰されるかと思った――離れていたひとつきのあいだの不遇を満たすように、狼は粛々とバラムを愛した。
     ついにバラムが意識を手放すまで、ずっと。


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