夜が更けるにつれて、街路をさまよう怪しい仮装の群れはだんだんと増えていくようだった。
魑魅魍魎たちは手に手にランプを持っている。ランプは暗い夜道を照らし、行き会う相手の顔をたまさか明るませる。もっともこんな夜にはお互いの素性など詮索しないものだけれど……。もしも仮装の群れに本物の妖怪や魔物が交ざっていても誰も気づかないだろう。
ランプの明かりはふわふわと鬼火のように流れてゆく。
バラムは小さなゾンビの一団を送り出し、診療所のドアを閉めた。
そろそろいいか、とホットチョコレートを温める鍋をガステーブルから降ろして火を消す。次から次へと襲来してきたおばけたちもようやく間遠になった。普段とは違うにぎわいでごった返していた診療所に静寂が戻る。
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