一歩前を歩く雨彦さんの背中をぼんやりと見つめている。足元がふわふわしている気がして、危うく躓きそうになるのを何度か踏ん張って堪えた。雨彦さんの自宅、アヤカシ清掃社にはクリスさんと一緒にお邪魔したことはあるけれど、泊まる目的で訪れるのは初めてだ。
雨彦さんは叔母さんと暮らしているはずなのに僕が行っても大丈夫なのかと尋ねたら「今夜は留守にしてるから問題ないぜ」と、さすが抜かりがなかった。誘われたからといってのこのこと彼についてきてしまっている自分を罠にかかる獲物のようで愚かしいと感じる反面、捕食されるのを期待してしまっているのもまた事実。雨彦さんと恋仲になってから、たまにちょっと自分の性癖の歪みを感じることがあって恐ろしい。
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