「奥義書か。お前さんの流派はこの時代から既に完成されたものだったんだな」
「そうみたいです。父は何代目からしいので……うん、襲爪雷斬と閃空裂破の合わせ技か…」
「…持って行くか?」
「大丈夫です、覚えました」
「しかしこれは言わばお前さんの父君の遺品だろう?手元に置いておきたいんじゃないか?」
「…そう、ですね…。でも荷物になりますし、事情を話して宿に置いて行こうかと」
「…ならば、私が保管しておこうか。今は持ち歩くのが難しいが、数箇所本を預けて置く場所を決めておいて、旅が終わったらうちの研究所で回収しておく」
「…それって、」
「ああ。私は本の管理は得意だぞ。私の時代から百年後まで…きっとお前さんが旅を終える頃までは綺麗に留めておいてやれるはずさ」
「ふふ、とても面倒じゃないですか?」
「なに、どうせ私の抱えている蔵書の数には適うまい。お前さんの奥義書がそこに加わったとて大差はないさ。…そしたらそうだな、死ぬ前にお前さんに遺言書を書かなきゃならんな…世界のあちこちにばら撒いておいたぞって」
「あはははっ!保管してくれる話はどこに行ったんですか」
「はっはっは、その方が面白いだろうと思って」
「も〜。……ばら撒くのはともかく、クラースさんの遺言書は普通に欲しいなぁ。必ず読みますから、たくさん書いておいてくださいね。出来れば他のみんなにも」
「もちろんそのつもりだ。私は筆まめな方だからな、期待しておいてくれ。もしかしたら手紙どころか本になっているかもしれんが」