「利華ちゃん」
都心の某ハイクラスホテルのラウンジ。眼下に広がる忙しい街など目もくれず、隣で涼やかに笑う彼女を見つめ、その名を呼んだ。
勝ち気そうな目元をたたえた、美しく品のある顔立ち。艶やかな濡羽色の長髪に、すらりとした体躯。美貌だけではなく、どんな話題にも合わせてくる知識と教養。それでいてこちらの会話を楽しませようとする話術。
所作のひとつをとっても瑕ひとつない完璧な、しかしどこかまだ幼さの残る少女──利華。
彼女とはとある筋からの紹介で出会い、報酬と引き換えに食事の席を共にしている、いわゆるパパ活の関係にある。
今まで出会った相手は一度きりの関係にしていたが、利華と出会ってからは彼女だけを指名し続け、食事の回数は二桁になろうとしていた。
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