『MAVでなくても手は取れる』第4話『クランバトルのレッド・コメット』クランバトル出場にあたってエグザベは一つだけ条件をつけた。『降参あるいは逃走のタイミングはエグザベが決定し、それを決めた場合はエグザベより先に逃げること』である。本当は頭部以外狙うなとか指示に従えとか色々条件をつけたかったのだが、相手が本気で命を狙ってこない保証ももうないのだ。その上にこちらが乗る機体も未知の借り物で、挙句スバルはニュータイプとはいえ記憶がないのだ。すべてが未知数である以上、あまり細かい事を言ってもしょうがない。
どうにか約束を飲み込ませて、自分たちが代打で乗る機体を見せてもらう。倉庫に隠されたMSは、端的に言うとかなり古いザクだった。赤くてV字のアンテナがついている。赤いガンダムに外見だけでも寄せようとしたのだろう。ビットはもちろん、頭部バルカンらしきものも見当たらない。正真正銘角付きの赤いザクである。
「どうだね、君の機体は」
「一応聞くけど、何で赤いんだ」
「元からだぞ。赤い彗星にあやかってそういう色に塗ったりガンダムに寄せて角をつけたりするのはクランバトルではさほど珍しいことではないらしい」
「記念参加勢ってことか?」
「そうとも言えるな」
スバルは涼しい顔をして少し遠くにある自分の機体を見に行った。遠くから見るだけでも似たような古さとわかるザクである。自分たちはこれに乗って戦うのか。それで『レッドコメット』を名乗って戦いぶりを中佐たちに見られる事になるのか。僕のギャンに会いたい。それがエグザベの率直な感想だった。
***
エグザベ少尉が連絡を絶って以来、中佐はソドンでずっと忙しなく方々と連絡を取り続けていた。事故の原因を追究し、「最悪の事態」を想起させて各所に圧力をかけながらも、まだ死んではいないのかもしれないという予防線を張ることにも抜かりない。しかし、まだ生きているかもしれないという姿勢を取るわりに、目立って探しに行くような動きは見せなかった。「逮捕された時にソドンを突っ込ませて迎えに行った男にしてはおとなしいものだ」とコモリは思っている。自分もまあまあ感覚が狂ってきたのかもしれない。
そして、久々に艦橋に姿を現した中佐の姿は大人しくはしているが落ち着き払っている訳でもないようにコモリの目に映っていた。この食えない上官は内心こそ微塵も見せてくれないが、内面の小さな揺らぎのようなものは時折垣間見えていることがある。ほら、今もまた前髪が落ちたし。「単独で調査なんかさせるからだ」という言葉を何度呑み込んだことだろう。どうせ呑み込んだところで伝わっているんだろうけど。
この落ち着きのなさはそれなりに目をかけていた──少なくともコモリにはそう見えた──エグザベ少尉を心配してのことなのか、それとも彼の持つであろう厄介なバックグラウンドを心配してのことなのか、それとも別のことなのかはコモリにはよくわからない。ただ、今の状況で「これ」を見たとき、少しくらいは何か違う表情が見られるかもしれないなと思い、彼女はスマホを片手に声をかけた。
「中佐、今晩のクランバトルの参加者は見ました? そろそろ始まるようですが」
「ああ、そんな時間でしたね……」
端末に目を落とせば、その目の前で参加者が変更したという表示が出る。その後に表示された名前は──
***
「相手もレッドコメットなのか!?」
「ははは、同じ名前でも出られるものなのだな。こうなれば相手よりも本物らしく戦うほかないな?」
対戦相手の名前を告げられたエグザベは困惑の声を上げた。代打で出ることになったクランのメンバー曰く、そういう英雄にあやかった名前はさほど珍しいものではないらしい。ついでに言うとスバルの登録名は『グレイ・ファントム』だった。言わずと知れた中佐の異名を彼は見せてもらったFoolypediaで知ったらしい。順応が早い記憶喪失者である。
「……一応聞くけど、なんで?」
「レッド・コメットの横にいる者の名はそうであるべきだと思ってな」
「本物が上にいるんだからここにいたら信憑性はガタ落ちじゃないか……」
「ふむ。他の名の者を伴っていても信憑性は低いように思うがね」
こういう時のスバルが強情なのはもうわかっているので、エグザべは何も言わなかった。
「なあ。もし相手が本物の『赤い彗星』だったら、どうする?」
ふと思いついて聞いてみるとスバルはからからと笑う。
「本物がこんなところで遊んでる訳がないだろう。きっとすぐに己のMAVのところに戻っているさ」
「それもそうだな」
笑い返すうちに、緊張がほぐれているのを感じる。自分がレッド・コメットで、組んだスバルがグレイ・ファントム。全部が無茶苦茶だが、いつか本物の『灰色の幽霊』と組む日が来るかもしれないことを思えば、予行演習としては悪くないのかもしれない。最初のMAV戦が中佐で比較対象が『赤い彗星』になるのは少々荷が重い。中佐はたぶん何も言わないが、絶対内心で比べられるに決まっているのだから。そう言い聞かせて、彼は機体の確認に移った。
……本物の『灰色の幽霊』は今や独りでMAV戦術をこなせるという事も、自分と組もうとしているその相手こそがエグザべが比較対象にされることを恐れている『赤い彗星』なのだという事も、今のエグザベは露ほども知らない。
***
準備時間が過ぎるのは速い。渡された古いパイロットスーツになんとか袖を通して集合場所に戻ってくれば、スバルは貰い物の平服のままで乗り込もうとしていた。エグザべは慌てて袖を引いて制止する。
「スーツの着方がわからないんなら言ってくれよ!」
「いや、違うが。なぜ着なければならない?」
「万が一のことがあったときのためだよ」
スバルは目を眇めてエグザベの姿を上から下まで眺めまわした。あまりにも古いノーマルスーツだ。実際に何かあったときには気休めにもならないだろう事は、自分でもわかっている。
「そのくらいなら着ないほうがましだと思うが。自分は撃墜されないという自負を持ってみたらどうだ」
「……そういう風にはなれそうもない」
「そうか。虚勢でも張り続ければ他者は信じるし、それは巡り巡って己の自負にもなるものだぞ」
「う……」
何も言い返せないでいるうちに、彼は自分の機体に乗りなおしてしまう。今回は仕方ないと見送ろうとして、思い当って叫んだ。
「おい。もしちゃんとしたスーツがあればその時は着るんだろうな!?」
「……」
「スバル!?」
返事はない。さらに問おうとしたところで、もう時間がない事に気づく。慌てて自分の機体に乗り込んで、あっという間にエグザベたちはコロニーの外で開始の合図を目にしていた。本当にこれで始まるのか、と思いながらエグザベは索敵を開始する。2機の気配はそれなりに遠い。さてどうやって死角から回り込むかと考えながら出撃を開始する。
隣で、スバルが滑り出るように前に出た。あっと思う間もなく相手の方に突っ込んで行く。そこには何の躊躇いも見られなかった。
「スバル!?突っ込みすぎだ、そんなことしたら格好の的に──」
エグザベが言い終えるより先に、スバルに向かって左右からビームライフルが飛ぶ。待ち構えていた軽キャノンが挟み撃ちに入ったのだ。それをすべて見越していたように、スバルの機体はくるりと直上に向かって跳んだ。刀身の長いビームナギナタまでAMBACに組み込んだが故の鋭い方向転換。
そこからはスバルの独り舞台であった。マニュアル操作のザクとはここまで軽やかに宇宙を舞えるものだったのか。スバルは軽々と踊るように相手を翻弄し、何度となく斬りつけ、全ての弾丸を遊ぶように躱し続けていた。盾持ちで、しかも装甲を改造した相手でなければきっと一瞬で終わっていただろう。どこまでも鮮やかなヒット・アンド・アウェイ戦法。
スバルが小さく笑うのが聴こえて、エグザベは我に返る。思わず見惚れるところだった。慌てて自分もその中に突っ込んで応戦する。残りの弾数が心もとないザクマシンガンを鈍器がわりにしながら敵の背後を取って殴り合いを始める。泥臭いが、正直に言うとこういう近接戦闘のほうが得意ではあった。
まあ、これがMAV戦だという事をエグザベの方はちゃんと覚えていたから、近接戦ばかりしていた訳ではなかったのだけれど。
そう、スバルは戦いには慣れた様子だったがMAV戦術は全く知らないようだった。それについては教えることなく一人で戦う事を視野に入れていたエグザべにも非があるのだが、スバルはそもそも連携という概念を有しているかも怪しい。本当に気紛れで、何を考えているかわからないのだ。エグザベはMSに乗っていれば敵味方の思考や狙いが読める方だし、スバルの思考も全く見えていない訳ではない。だが、彼の思考は本当にすぐに切り替わるのだ。先のことを考えていない訳では無いが、他にもっと効果的なことを思いつくとすぐにそちらに狙いを切り替える。思いつきで動くなと叫びたかったが、それが功を奏しているのだからタチが悪い。実際のところ僚機のエグザベに読めない行動が敵に読める筈がないのである。だから、エグザベはそうそうにスバルの狙いにあわせることを諦めてもっぱら敵の思考を読むことに専念していた。敵の連携を読んで、相手が自分にいてほしくないであろう位置に自機を置くのである。この頼りない武装ではそれが精一杯だとも言えた。
ついにスバルが一機の首を飛ばした。これで片付けるぞと意気込んだ直後、スバルの様子がおかしいことに気づく。荒い吐息と、低い呻き声。呼びかけても返事はない。まずい。戦いぶりに圧倒されて忘れていたがそもそも彼は病み上がりである。バイクの上でいきなり倒れた時の姿が脳裏をよぎる。
目の前にいる敵機を突き放して、視野を広くとる。スバルの機体は首を失った機体に羽交い締めにされていた。視界がない状態でやっているから完全ではないが、行動が阻害されていることには違いない。どう考えても反則行為である。頭部を破壊してもまだ戦うなんてことを許せば、後にはもう殺し合うしかないではないか。
追いすがる敵機を蹴って加速して、エグザベはスバルたちの所に突っ込んだ。勢いのままにもつれ合った時に、目の前に鮮やかな光が広がる。モビルスーツすら視界から消えて、自分の身がきらきら輝く色彩の洪水の中に浮かんでいるような感覚。遠くで誰かが歌っているような、そんな音すら聞こえて来た。
サイコミュが異常な共鳴をしている。自分たちのザクには積み込まれていないはずだから、敵機が積んでいたのだろう。
「うわあああ!」
嫌な予感に突き動かされて、エグザベは無我夢中で己の感覚を飛ざした。確かに解放感はあるがそんなものに浸っている場合ではない。サイコミュの異常挙動の危険性はスクールで叩き込まれている。
「スバル!戻ってこい!キャスバル!!」
感覚を閉ざして、自分の声だけで叫ぶ。キャスバルの名を叫んだ瞬間、ララ音と光の洪水がきれいさっぱりと消え失せた。戻ってきた暗い視界の中で、目の前の敵機が突然手足をぴんと伸ばして離れて行く。サイコミュの制御を失ったか、あるいは乗っ取られたかのような挙動。何なんだよと混乱する思考の中に声が割り込む。スバルの声だ。
「頭を下げろ!」
迷わずそれに従うと、下げた頭の上をビームナギナタが一閃した。背後から迫る敵機の首がそれで飛んだという事は、振り返って確認するまでもなく自明なことだった。
決着の合図が打ちあがるのもそこそこに、エグザベはスバルの機体の腕をひっつかんでそそくさと撤退した。何やら嫌な予感がしてならなかった。あのサイコミュの挙動は何なのか、それはスバルのせいなのか、『赤い彗星』の名でサイコミュを積んだ機体を持ち出した彼らは何者なのか。いくつもの懸念に追い立てられるように、隠れ家に戻ってコクピットからスバルを引きずり出す。疲労こそしているようだったが、彼はすこぶる元気だった。興奮したように目を輝かせて「凄かったな」と笑う。いや、この目の輝きはただ興奮している訳ではないのかもしれない。青い目の奥に、あの赤い輝きがチラついているように見えてならない。
出自がどうあれ、彼は『本物』だ。足元をふらつかせながらついてくるスバルの腕を引きながら、エグザベはそう確信していた。最後の機体の動きはきっと彼がサイコミュ制御を遠隔で乗っ取ったのだろう。そして、それだけの事を可能とする者なら、ジフレドだってきっと。
理由など必要としない本物のニュータイプ。閣下は彼を気に入るだろう。
そして彼は赤いガンダムの参考人でもある。中佐は彼をどう扱うだろう。
キャスバルという名を秘した、正体不明の青年。彼は何を望むのか。どの立場であったとしても、エグザベはきっとその希望を叶えてやることは出来ないだろう。中佐の部下としても閣下の騎士としても、自分が差し伸べた手はきっと彼の助けにはならない。自分といればいずれ会うべきマヴ(彼はその単語を口にしなかったが、その関係に一番ふさわしいのはその単語だろうとエグザベは理解していた)に会えるとスバルは信じているようだが、エグザベはそれを信じる気にはなれない。
スバルはずっと興奮した調子で話しかけ続けてきている。それに曖昧な返事をしながらエグザベは一人で思考を巡らせる。自分の立ち位置も胸中も、彼に悟られるわけにはいかない。同じところで食事を共にし続けていても、同じニュータイプとして共に『キラキラ』を垣間見て感応を抱いたとしても。自分たちは理解しあう事はできないし、される訳にもいかない。戦闘だって、ほとんど振り回されるばかりだ。
結局のところ、どう足掻いたってエグザベはスバルとMAVにはなれっこない存在だった。
***
一方、ソドン。
「エ……」
画面に映った赤い機体の動きを見て、コモリはおもわず声を漏らしかけた。しいっと、中佐が唇の前に指を立てるジェスチャーをするからあわてて飲み込んだのだが。周囲のクルーたちには、赤い彗星を名乗る出場者が赤塗りのザクに角をつけて出て来たという面の皮の厚さにびっくりしたようにしか見えなかった筈だ。「エグザベ君」と呼びかけていたのだとわかっているのは、きっと横で画面に見入っている中佐だけだろう。
客観的に見て、滅茶苦茶な戦いだった。『グレイ・ファントム』を名乗るモビルスーツがひたすら先陣で暴れ狂って残りの三機(そのうちの二機が赤い彗星を自称している)が全員振り回されているようにしか見えない。なんでこれで灰色の幽霊を騙ろうと思ったのだろう。正直に言うとコモリは何度か笑いを堪えるのに苦労していた。なんせ真横に灰色の幽霊ご本人が立っているので。
ただ、その滅茶苦茶な戦いの中で。振り回されながらもどうにか戦局を読んで立ちまわって戦い続ける「『レッド・コメット』の角が生えているほう」の姿が、彼に被って見えて仕方なかった。だから、エグザベの名を咄嗟にコモリは呼びそうになってしまったのだ。
何もかもが変な戦いはすぐに終わった。言うまでもなく、灰と赤のほうの勝利である。コモリはそっと隣の中佐の表情を伺い見た。
シャリア中佐は、コモリが今までに見た事がないような顔をしていた。魅入られているような、眼を背けたがっているような、微笑しているような、怖れているような。今までに見せた事のない感情のようなものが透けて見えるのに、それらが複雑に混ざり合っていて結局どういう感情になっているのか想像もつかない。コモリの視線を感じ取ったのか、中佐はふとその全ての表情を消した。後には風のない湖面のような、いつも通りの柔らかな仮面。その向こうから、灰緑の視線がこちらを探るように観察している。
「……本物じゃ、ないですよね。あの赤いの」
咄嗟に発せたのはあまりにも当然の言葉。中佐はわずかに笑って答えた。
「ええ、大佐には似ても似つかない……ですが、いいパイロットです。将来が楽しみだ」
この顔をエグザベ君に見せてやりたい。ここに彼がいないのが本当に残念だと、コモリは心から思った。
「それで、調べますか」
「お願いします。……ああ、念のため両方のクランについて。やってくれますね?」
「え?はい……」
コモリの言葉に「頼みましたよ」と頷いて、中佐はまた自室へと戻っていく。その背を見送る彼女はまだ気づかない。あの戦場を我が物顔で駆け巡っていた『灰色の幽霊』について、彼が一言も言及しなかったという事に。
***
「どういうことだ。脳波、被検体アルファのパターンと一致しています!」
「そんな事があるものか! それにあの灰色の幽霊はどうしたんだ!」
「だからそれが一致しているんですよ!」
「違う、本物のほうだ!」
薄暗い実験施設の一角。首のない軽キャノンの前とそれに繋がれたモニターの前で、研究者たちは顔を見合わせていた。モニターに映し出されているいくつかの波形は、先程の戦闘でサイコミュに干渉した存在が彼らの言う「被検体アルファ」である事を示している。
正体不明の強力なニュータイプである被検体アルファを失った彼らには新しいデータが必要だった。だから、制御を緩くして検知範囲を広く設定したサイコミュを乗せた機体に赤い彗星の名を与えて飛ばしたのだ。強力なニュータイプがその機体に意識を向ければ、その脳波を拾って記録できるように。このサイド6の上空にはジオン最強と目されるニュータイプが居座っていて、赤い彗星を探しているという。だからその名で出場したし、あらゆる伝手を用いてその話が彼の耳に入るように仕向けた。そして、その結果がこれだ。対戦相手がレッドコメットとグレイファントムを名乗って来るなんて誰が予想できようか。
記録された波形は二つ。そしてその片方は、被検体アルファと一致する。そしてそれは、組み付かれていたあの『グレイ・ファントム』機から発せられていた。もう一つについてはわからない。ただ、強力である事には間違いがなかった。
「この波形は誰なんだ? 結局シャリア・ブルなのか?」
「断定するには速い。敵機の方に意識を向けていた可能性があるからな」
「グレイ・ファントム機が被検体アルファだとして、じゃあこのレッド・コメットは誰なんだ。いっそこいつがシャリア・ブルじゃないのか」
「いくら何でもクランバトルには出ないだろう」
「中立のコロニーに艦を突っ込ませる男だぞ?何をしてもおかしくない」
「確かな事から確認しよう。少なくとも、向こうの『レッド・コメット』もニュータイプだ。それは間違いない、ララ音だって観測されている」
錯綜した議論は過熱する。二人以上のニュータイプの意識が共鳴した事だけは確かだが、その内訳が確定できない。あらゆる可能性が口の端に昇り、そして消えていく。その中で、誰かがその機体名に改めて目を止め、呟いた。
「……まさか、本物のシャア・アズナブル?」
ボタンを掛け違えた仮説は加速する。
それでも、逃げ出して死んだと思われていたアルファは見つかったのだ。それを追って連れ戻すという事だけが彼らの決定事項だった。
***
あらゆる情報と仮説が錯綜する。「クランバトルのレッド・コメット」を巡って、イズマの空で、地下で、思惑が動き始める。
その正体たるエグザベ・オリベだけが、来たるべき動乱の足音に気づいていない。