皇帝たる少女 レイチェル=マノン・リベレティアは現人神である。
現人神であるということは、周囲の人間は皆、己にかしずく事が道理である。
現人神であるということは、他者に罰を与え、罪を清算させる責務を負うものである。
全てにおいて許しを得る必要は無く、全てにおいて赦しを与える存在である。
彼女に逆らう者は居らず、彼女は指一つ動かす必要は無かった。
この時代においてあまりにも恵まれた小さな世界、そこに彼女は君臨していた。
しかし、”君臨すれども統治せず”。彼女は逃げ出す意思すら持てず、ただ罰を与え調和を齎す人形でいるしかなかった。
……そこに彼女にとっての幸福は無く、ただ息苦しさだけを感じていたとしても。
「申し訳ございません、隊長!」
1453