あなたのまなざし 棘は悩んでいた。
元担任の五条悟の言った言葉が頭から離れなかった。
「その気がないならそんな目で見ないでよ」
何の前触れもなかった。ただ普通に会話をしていただけだった。それなのに、五条は唐突にそう言った。
そんな目とはなんだ。どんな目だ。
素っ気ない言い方に、棘は少しだけムッとした。
どういう意味?
ムッとしたことを隠さずに問うと、五条は、さあね、と言った。答える気は無いようで、自分で分かってないの? とまで言った。心外であった。
大体、その気、というのも何だかわからなかった。術師としての意気込みの事だろうか? 今更そんな事を言い出すのだろうかこの人は。とにかく自分は迷いなく突き進むだけであって、いつだって真面目に物事に取り組んでいるつもりであった。たまにふざける事もあるけれど、そんなものは学生の戯れと五条も容認しているはずなのだ。
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