桜の盛りも大分過ぎ、葉が目立つようになった桜の枝がそよ風に揺れている。誰かの笑い声が遠くから聞こえてくる中、自室で本をぱらぱらとめくっていた小竜は、本を閉じて軽く伸びをした。
今日は久しぶりの非番。特にすることがあるわけでもない。片付けでもしようかと思ったが、部屋を見回しても片づける必要があるほど散らかってもいなかった。小竜の部屋は細々とした物は多いが、性分なのか常にある程度は整理整頓されている。
(うーん、暇だなあ)
何もしないのもなんだか勿体ない気がするが、連日の出陣の影響か、なんだかどこかふらっと旅に出たいとも思えない。正直に言って、この日の小竜は少し疲れが溜まっていた。
(あ、そうだ)
適当に開けた引き出しの中を見て、小竜は今日の行先を決め、引き出しの中から小瓶を一つ取り出すと、自室を後にした。
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