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    水鏡零

    某あの茶の人
    訳あって別のハンドルネーム

    男性向けのイラストを穏やかに置いてゆくことが多いよ
    シチュボイス系のイラストも置いてゆくよ

    R18系はモブ攻めと明らかに人を選ぶシチュばかりなのです
    観覧は個人の責任でお願いしますヨ

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    POIPOI 73

    水鏡零

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    【PSZの三次創作小説:2】
    前回の続きですね
    この後はどっかに供養すると思います
    これ以上を載せるためには、本編的なモノを置かないといけないじゃないですか
    そこまでオープンハートではないので、需要があったら別の場所で
    マザーとの一件で月の技術が地球へと流れてきたら、転送技術や移動技術も進歩するんじゃないかなっていうのが思うにあるんですよね
    対峙したのはレーヴェちゃんじゃないです

    #三次創作
    threeCreations
    #お前大丈夫か
    areYouAllRight?

    轟音となって空から隕石のようにそれは降ってくる。
    街の外壁を狙い、降下した機体からレーザーが解き放たれだした。
    「前衛はひるむなっ!止まればこちらの負けだと思えっ!」
    「いくぜっ!」
    怒涛となって人々が動き、無機質な人を模ったエネミーへと武器を振りかざしてゆく。
    外壁を守るようにテクニックを放つ人々は、その場に踏み込み雨のように降り注ぐ攻撃をしのいでいた。

    それらをかいくぐるように白い一点が動き、人々を援護するかのようにエネミーへと突風が突き立てられる。

    音を立てて破壊された破片が飛び散り壁や地面へと突き刺さるが、それに構わず白い一点は動きを止めない。

    その一点を追うように動く二つの影が輝き、背後から襲おうとしたエネミーを破壊する。

    押され気味だった人々の流れが変わり、だんだんとエネミーを後退させだした。

    それでも上空から降り注ぐエネミー達は数を減らすことはない。

    「恐らく。どこかに指示塔がいるはずかとっ!」
    「それがどれかなんて、考えてはいられんな・・・・」
    黒いボディのキャストが太刀を構え直し、前方から迫るエネミーを切り払うように走る。
    隣では軽々とエネミーを飛び越え、背後から刀をその機体に突き立てる少女の姿があった。
    少し離れた場所から、彼らに合流するかのように二つの刀を構えた女性が駆け寄ってくる。
    「ルイスさんの姿を見失いましたっ・・・・」
    「あの・・・無鉄砲男め・・・。」
    長い黒髪を一つに束ねた女性の言葉を聞いた黒いキャストは、大きくため息をつく。
    彼らの隣では苦笑いを浮かべつつ、周りへと視線を向ける少女がいる。
    周りでは人々の声が響き、更に銃弾や閃光が飛び交っていた。
    とてもその場に立っている状態ではないが、平然と会話をする三人はそれだけ実力があると言っていいのだろう。
    「もう、このなんでしたっけ・・・その・・・ロボットさん達を見たとたんに走り出しちゃうんですから・・・その・・・止めようがないというか・・・もう・・・ぁぁぁあ・・・。」
    「パルミア様。落ち着いてください。」
    「まぁ、ルイスの事だ。ただでも死なんだろう。」
    「・・・カゲチカさんも・・・またそんなことを・・・」
    うろたえだした茶色の髪の少女パルミアは、背後から銃口を向けてきたエネミーに対して、身を低くすると腰に下げた刀を一振りする。
    彼女に続くかのように黒いボディのキャスト、カゲチカが背中に背負った太刀を振り下ろした。
    歪な音を立て身体を破壊されたエネミーは、配線を焼きながら胴体をバラバラと地面にまき散らす。
    見れば、パルミア達の周りには幾つものエネミーが揺れ動いていた。
    「とにかく、当面の目標は勝手に走ってるルイスに追いつく事だ。」
    「ある意味鍛錬よりも難しいですね。」
    「サナさん・・・。」
    腰に下げた双剣を構え黒髪を揺らして笑ったサナに、思わずパルミアは唖然とする。
    視線を前方へと変えれば、ぽつんと遠くに一つの白い点が見えた。
    それは動くたびに辺りを砂埃に変え、同時にエネミーを破壊して部品をまき散らす。

    留まる事のない白い点は、汚れ消える事もない。

    「行くぞ。シティの方は市長に任せ、我らは司令塔を見つけルイスを回収する。」
    「了解ですっ!」
    「は、はいぃっ!」
    自分に言い聞かせるかのように言い放ち走り出したカゲチカに合わせ、サナと遅れてパルミアは白い点に向かって駆けだした。



    ――



    つんざくような音と共に白い機体がバラバラにされ、背後から迫った新手の腹部には大きな風穴が瞬時にして開く。
    「っ!」
    白い布をはためかせ、地面を大きく踏み込むと思い切り片腕を突きだす。
    全ての物を吹き飛ばすかのように突風が巻き起こり、殆ど距離が無かったエネミーは原型を留めないほどに砕け散った。

    後方では人々の声が響き、更にその後方では街の外壁が見えた。

    上空を見れば、湧き上がる怒りの元凶が隕石となって降り注いでいる。

    「絶対に・・・死守する・・・絶対に、だっ!」
    自分に言い聞かせるように声を荒げると、緩んだ手の包帯を締め直し、辺りに集まってきた新手に視線を向ける。
    一斉に銃口や武器を向け、無機質な白い機体の中では小さな機械音が鳴り響いていた。
    「この程度のガードロボで、僕を止められると思うなよっ!」
    目に見えない敵の親玉に向かって吠えると、刃先を振り下ろした機体を蹴り上げる。
    突風を上げながら姿勢を崩されたエネミーは、そのまま胴体を蹴り飛ばされ爆音を上げながら吹き飛んだ。
    「あぁぁっ!」
    姿勢を低く構え片腕に力を込めると、ためらうことなく前方に迫った機体の胴体へと突き出す。
    武器ごと壊されたエネミーは後退し、背後から迫ってきた太刀によって真っ二つに粉砕され機能を停止させた。


    「・・・・やっと・・・追いついたか・・・・」
    「あっ・・・かげ・・・ちか?」
    思わぬ人物の姿に、彼は出かかった手を無理に戻す。
    大きなため息をついたカゲチカの後方からは、彼にとって見慣れた人物たちが駆け寄ってきた。
    「や・・・やっと・・・追いつきましたぁ。」
    「る、ルイスさんっ!」
    「・・・さ、サナ・・・・。」
    その場に膝をついたパルミアの横から、鬼のような形相を浮かべてサナがぎろりと目を光らせる。
    あまりの威圧感に今まで漂わせていた殺気が一瞬にして消え去り、逆にどうしたものかと、冷やりとしたモノがルイスの背中を伝った。
    「副隊長として申し上げます。・・・身勝手な行動はお控えください。」
    「う・・・そ、それは・・・その・・・」
    どうしたモノかと深い緑色の瞳を左右に動かし、ルイスは苦笑いを浮かべて後ずさりをする。
    カゲチカに助けを求めようにも、そのカゲチカから発せられる雰囲気もサナと同様だった。
    「申し訳・・・・ない・・・です・・・。」
    「ルイス・・・お前は・・・。」
    地面に太刀を突き立て、カゲチカは更にルイスを問いただす様に声を発してゆく。
    今まで成り行きを見守っていたパルミアさえも加わり、しぶしぶとルイスは頭を下げるしかなかった。

    「いいですか?これらのエネミーを対処する方法を知っているのは、ルイスさんだけなのですよ。」
    「・・・・。」
    「貴方が一人で片づけられる量ではないのです。」
    「皆が一段となってシティを守っているのだ。分かるだろう?」
    「・・・はい。」
    ルイスは視線を彼らから逸らすと、後方に見えるシティを見る。
    そちらでは多くの人々が動き、未だ蠢くエネミーに向って必死に対処をしている状態だ。
    上空から降り注いでいたエネミーの数も減りつつあるが、それでもこの状況がいつ終わるかは不明である。
    「手慣れた者達が残っているとはいえ、この状況は異様です。」
    「これだけの数を有しているのだ。・・・どこかに司令塔がいるのではないだろうか?」
    「司令塔・・・・。」
    話を変えるかのように、サナとカゲチカが言葉を発する。
    ルイスをいつまでも叱っていても、状況がどうと変わる訳ではないとお互いに判断したらしい。
    彼らの対応に感謝しつつも、ルイスは冷えてきた頭をひねる。

    今まで弾丸のように敵を倒す事だけに集中し、更に“頭に血が上っていた”事もあったため、カゲチカの言葉にはっとするしかない。
    上空から降り注ぐエネミー達は、どの機体も同様の動きをしているようにも見えた。
    となれば、この場に指令を出している者がいるのかもしれない。
    街からそう遠くない場所で見かけた機械のエネミー達も、近くに集まっていた機体に指令を出している物が含まれていることもあった。
    思い返してみれば、エネミーと対峙したときにしきりに機械音が小さく響いていた事を不意にルイスは思い出す。
    「そう・・・か・・・。確かに、その可能性は高いかもしれない。」
    “思い出したくもない昔の事”をふっと脳裏によみがえらせ、同時に似たエネミーと戦った“あの出来事”を思い起こし出した。

    そして、恩師や仲間たちの言葉を思い浮かべる。

    「だとしたら、それは変わった機体のはず・・・・そう・・・こいつ達と似つかない機体があるはずだ。」
    額に溢れた嫌な汗を拭い、ルイスはサナ達に言い放つ。
    苦悩したルイスの表情に困惑しつつも、力強く答えた彼を見て、サナやカゲチカは大きく頷いた。
    「自律的にある程度は行動できるはずだけれど、戦場の状態を見て攻撃パターンを変えているとなれば、あまり離れていない場所にいるだろうと思うけれど・・・・。」
    「それだけの情報があれば良い。」
    「これだけ真っ白なエネミーなのですから、変わったモノがいれば、すぐにでも視界に入ります。」
    軽くルイスの肩を叩いたカゲチカはサナとうなずき合うと、辺りに集まりだしたエネミーと距離を取りつつ武器を構え直す。
    今まで話に入りにくく近くに座り込んでいたパルミアも立ち上がり、ルイスたちと同様に敵と対峙しだした。
    シティから聞こえてくる人々の怒涛の声や爆音に紛れて小さな機械音が目の前のエネミーから聞こえてくる。
    そして、そのかすかな音が鳴りやむや否や、エネミー達が一斉に動き出し始めた。
    「ルイスさんの言うとおりのようですねっ!」
    風をまとう様に動いたサナは、構えた双剣でエネミーの腕を切り刻む。
    姿勢を崩し転倒しそうになったエネミーの頭上から、とどめを刺す様に刀が突きたてられると、期待を貫いた刀を引き抜きパルミアが地面に降り立った。
    「音がしてから直ぐに行動へと移ったとなれば、指令を出すエネミーがいる場所は近いのかもしれんな。・・・ルイス頼めるかっ?」
    「あぁ、任せてくれ!」
    背中に太刀を背負ったカゲチカに声かけられたルイスは、間髪入れず彼の言葉に首を縦に振る。
    カゲチカは少しばかりルイスから距離をとると、姿勢を低くしてルイスの方へと駆けだす。
    「いくぞっ!」
    「よろしくっ!」
    足に力を入れたルイスは、駆け寄ってきたカゲチカをそのまま上空へと放り上げる。

    ヒューマンの体重よりも重いはずのカゲチカであるが、ルイスはいとも簡単に彼の身体をまるで手に持ったボールを投げるかのように、空に向かって持ち上げてしまったのだ。
    ルイスはほどけた手の包帯を結び直し、カゲチカが降り立つであろう場所から距離をとる。
    エネミーの視線を越え空へと投げ出されたカゲチカは、辺りをぐるりと見渡しつつ降下してゆく。

    そしてとある一点を見たカゲチカは、おもむろに背負っていた太刀を両手で構え刃先を地面へと向けると、その先にいたエネミーに突き立て着地した。
    辺りに砂塵が舞い上がり、相当な衝撃が地面へと降り立った事を意味してゆく。
    「見えたぞっ!あちらの方向に、形の異なるモノが一体っ!」
    「了解です。」
    「先に行きますっ!」
    地面から太刀をカゲチカが抜くよりも先に、サナとルイスが彼の指さす方へと駆けだす。
    「ちょ、ちょっとお二人ともっ!」
    「まったく・・・。団体行動も取れんのかっ!」
    遅れて彼らに合わせる様に、パルミアとカゲチカが走り出した。
    エネミーの攻撃を越え、ルイスとサナは窪まった地形に見えた物体へと走り急ぐ。
    「どうやら、大当たりのようでっ!」
    「っっ!」
    急に前方を塞ぐように集まりだしたエネミーに、ルイスはひるむことなくこぶしを向ける。
    彼は一旦その場に立ち止まると、瞬時に片腕へと力を込め、武器を振り上げたエネミーの胴体へとこぶしを叩きつけた。
    突風が辺りを包み、あまりの威力にまわりを漂っていたエネミー達が吹き飛ばされる。
    大きく後方へと飛ばされたエネミーに巻き沿いを食い、幾つもの白い機体が前方で塊となって粉砕された。

    「あれ・・・はっ!」
    黒い機体の前に一人のヒトが立っているのを見つけ、ルイスは目を大きく見開く。
    両剣を構えたその人物は、ルイスたちの服装とは全く異なった姿をして佇んでいる。
    赤いゴーグルの下で鋭い眼光が光り、その先に迫るサナへと殺気が迫っていた。

    「サナっ!駄目だっ!対峙しては勝ち目がないっ!」
    「っっ!」
    ルイスの言葉もむなしく、サナは構えた双剣で黒い服をまとった人物の攻撃を跳ね返す。
    重い金属がすりあう音が辺りに響き、二人の間に一定の距離が生まれた。
    どうやらルイスの声はエネミーや周りの音にかき消されたらしく、サナは止まる気配が無い。
    「ルイスさんっ!」
    「ルイスっ!サナっっ!」
    唖然と立ち尽くしてしまったルイスに、後方から駆けよってきたパルミアが声を張り上げて問いかける。
    カゲチカは二人を追い越すと、すでに戦闘が始まっているサナ達の方へと駆けて行った。
    両剣から発せられる猛攻に押されたサナは、自らの武器でその一つ一つの攻撃をかわすことしかできない。
    それどころか、だんだんと距離を縮められており、息つく暇さえも与えられない状態だ。
    二人の間に割って入ろうとカゲチカが走るが、彼が武器を振るえないよう黒服をまとった男は、サナとの距離を無理に詰める。
    「総隊長っ!危険ですっ!」
    「馬鹿を言うなっ!お前が危険だっ!」
    「っくっ!」
    声を発することなく淡々と攻撃を繰り出す敵に、サナはエネミーとは違う殺気を感じだす。
    力の差をこの短時間で見せつけられ、とっさにとった受け身でさえも、体勢を直すのがやっとだ。
    「っっ!サナさんっ!」
    「っっっ!」
    パルミアの悲鳴が聞こえるや否や、砂埃を上げてサナは地面に叩きつけられた。
    辺りに鮮血が舞うが、彼女はすぐさま立ち上がり双剣を構える。
    「パルミア様っ!来てはなりませんっ!」
    「動くなっ!サナっ!」
    石の上に自らの血を下垂れつつ、サナは目の前に迫った敵へと視線を移してゆく。
    剣先についた血を大きく払い落とすと、黒服をまとった人物は目の前で膝をつくサナを赤いゴーグルの下から見下す様に見る。
    カゲチカが苦々しげに武器を構えるが、一歩動くごとに敵がサナへと近づいてしまう。
    どうにも手が出せないもどかしさに、カゲチカの手が震えていた。

    「これ以上・・・・大切な人たちに手を上げることは・・・っ!」
    「る、ルイスさんっ?」
    突然とパルミアの手を振りほどいたルイスは、ゆっくりと歩き出す。
    ルイスの両腕が小さく震え、肩は同じようにわなわなと震えている。
    感じた事のない重々しい彼の雰囲気に、パルミアは手を伸ばす事さえもできない。
    ルイスの動きに気が付いたのか、ぴくりと敵の肩が動いた。
    「っっ!ルイスっ!相手は人だっっ!」
    「っ!」

    尋常ではないルイスの雰囲気にカゲチカが声を荒げるも、声を発した瞬間には遅く、その場には小さな砂埃が舞っているだけになっていた。

    「る、ルイスさっ!」
    サナが息を飲んだ時には、目の前に迫っていた殺意は別の方へと向いており、地面が大きくえぐれる音と目を覆う程の砂埃が舞う。

    その先には腕を振り払って立ち上がるルイスが見え、離れた場所に着地した敵の姿があった。

    「・・・貴様・・・ヒューマンではないのか?」

    両剣を構え直した黒服をまとった青年は、自分を睨みつけるルイスに向かって声を発する。
    その口調はとても冷たく、感情がこもっているようには聞こえない。
    二人の様子を気にしつつもカゲチカはサナに近づき、彼女を抱えてパルミアの方へと駆けてゆく。

    ふわりとまった風のおかげで砂埃が消えてゆくと、生身の人間へと向けられたとは思いたくない程の惨状が見えだした。

    地面はえぐれ歪に崩壊し、岩石は粉々に砕け散っている。
    辺りに散乱していたエネミーの破片は無くなったかのようにつぶれ、巻き込まれたエネミー達は、胴体を粉砕され原形を留めていない状態で辺りに散乱していた。

    「僕は・・・ヒューマンだよ。・・・親衛隊・・・。」
    「っ?」
    白い服をたなびかせ、ルイスは低く唸るように呟く。
    離れた場所で見守っていたパルミア達には二人の会話はあまり聞こえず、一体何が起こっているのかさえ分からない。
    応急処置をされたサナは、カゲチカに抱えられながら苦々しげに敵の青年を見ている。
    「そうか・・・貴様・・・生き残りか?」
    「・・・・。いきの・・・こり?」
    あざ笑うかのような青年の言葉に、パルミアはぽつりと彼の言葉を確認するかのように発した。
    小さく肩を震わせてたたずむルイスは、さげすむ彼の口調に、怒りを露わにしてゆく。
    「まぁいいさ・・・。どのみち、貴様らに未来はない。」
    「っ?」
    轟音と共に今まで動きもしなかった黒い機体が動きだし、辺りに突風を噴き荒らしながら飛び立つ。
    それは敵の青年へと近寄ってゆくと、軽い音を立てて機体が開いてゆく。
    未だ遠くから降り注ぐ白い機体のエネミーが集まりだし、まるで青年を守るかのようにルイスたちの前方へと集結しだした。
    「月に・・・逃げ帰るのか?」
    「逃げる・・・だと?」
    ゆっくりと構えの姿勢を取ったルイスの言葉に、黒い機体に手をかけた青年がピクリと肩を震わせる。
    赤いゴーグルの下から殺意に溢れた視線を向けて、ルイスを見下す様に睨みつけた。
    「挑発に乗るような馬鹿ではない。・・・このような小物の相手は、我々がするべきではないと・・・我らが偉大なる母が新たな指令を私に与えてくださったのだ。」
    「・・・・。」
    「ルイスっ!」
    腰に下げた銃を手に取り、青年は銃口をルイスへと向ける。
    ルイスはひるむことなくたたずみ、じっと青年を睨みつけた。
    「・・・長いは無用だ。せいぜい足掻くがいい。実験体。」
    「っっ!」
    吐き捨てる様に言葉を発した青年は、手にした銃を持ち直し、銃口をルイスの後方へと向ける。
    そこにはサナやカゲチカ達が立っており、ルイスは目を大きく見開く。
    「・・・・っ!」
    ルイスが声を発するや嫌な、軽い音を立てて銃声音が鳴り響いた。



    ――




    弾かれたように目を開けたルイスは、寝床から起き上がると部屋を出て廊下へと歩いて行った。
    静まり返った廊下を抜け、ぼんやりとした灯篭の明かりで照らされた中庭へと降り立つ。
    「眠れないのか・・・?」
    「えぇ・・・。」
    後方から声をかけられ、ルイスは振り返る事無く声の主に答える。
    白髪の男性は大きく背伸びをすると、ルイスの横へと歩み寄った。
    顏や腕に包帯を巻きつけた彼の姿を見た男性は、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
    「お前が来た時の事を思い出してしまうよ。」
    「・・・すみません。無茶をしました。」
    小さく頭をかいたルイスは、居心地悪そうに苦笑いを浮かべるしかない。
    ふっと視線を上に向けてみれば、白々とした月が見えた。
    「そのガードロボと言ったかな?あのエネミーによる襲撃は収まったと言っていいだろう。」
    「そう・・・ですか。あの・・・サナは・・・。」
    「あぁ。副隊長か?」
    彼の言葉に頷いたルイスは、更に表情を曇らせた。
    「彼女なら今は安静にしているが、特に後遺症も何もなく大丈夫だそうだよ。」
    「・・・・よかった。」
    ぽつりと呟いた男の言葉に、ルイスは大きくため息をつく。
    その顔を見て微笑んだ白髪の男性は、彼と同じように空を見上げた。

    白い機体の機械エネミーによる大規模な襲撃は三日三晩続いた。

    最初は押され気味だったシティの人間たちも、次第に優勢となってゆき、エネミーの数も激減している。
    空から星のように降ってきたエネミーも無くなり、今は残党とも言える数えるほどの残りを減滅させるだけになっていた。
    それらによる負傷者は少なくなかったが、死者は幸いながら一人も出ることが無かった。
    シティの損傷も少なく終わり、壊された外壁の修繕もそれほどかからないと市長から発表されている。

    「パルミアがずいぶん怒っていたよ。ルイスがカゲチカ以上に無理をしていたとね。」
    「はは・・・・。」
    「それから、母上もかなり心配していたからね。ちゃんと、終わったら謝っておきなさい。」
    「はい・・・。」
    大きく頷いたルイスは、どう言いだしたモノかと男性の顔をちらりと見つめるしかない。
    「あの・・・アルス様。・・・いえ・・・“父上”・・・」
    「なんだね?」
    歯切れの悪い言い方をしつつ、ルイスは隣で静かに答えたアルスに問いかける。
    手に巻かれた包帯をいじりながら、ルイスは深呼吸をした。
    「月の事・・・・。僕達の事・・・。そろそろ、言わなくてはいけないのかもしれない。」
    「・・・・。」
    「カゲチカやサナ達には、ちゃんとこれからの事もあるから・・・」
    「そう・・・だね。」
    急に口調さえ変わったルイスに、アルスは優しく微笑む。
    ルイスは手首をじっと見つめ、そこに“刻まれた数字”をなぞる。
    成長したとはいえ、過保護な程に守ったその“傷”は、くっきりと跡を残していた。
    「まだ整理はできていない部分もある。ちゃんとできたら・・・そう・・・この襲撃がひと段落した後に・・・皆へ話をするよ。」
    「・・・辛くないのか?」
    服に仕舞い込んだ包帯を取り出し、手首の傷を隠す様にゆっくりとルイスはそれを巻きつけてゆく。
    しっかりと布の下に数字が消えたのを確認し、ルイスはうなずいた。
    「辛い・・・痛い・・・苦しい・・・それはまだずっと続くんだと思うんだ。でも、それではいけない。先には進めない。」
    神々しく発光する月を見上げ、ルイスは目を細める。
    「・・・あの場所に残した弟や妹たちを救わなくてはいけないんだ。
    それに・・・」
    「・・・それに?」
    月から視線を外し、ルイスは目を閉じる。
    その瞼の先には、いつも一人の人物が微笑んでいた。
    戦火の燃える中で、一際輝いた笑顔をしていた彼女の顔が、どんな時も何年たっても忘れることなく鮮明に思い出される。
    「いつか・・・月に行き・・・決着をつけなくてはいけない。」
    「・・・・そう・・・か。」
    目を開けてルイスは隣で微笑むアルスに頷いた。
    アルスも彼の表情を見て、頷く。
    「お前には家族がいる。我々を頼りなさい。」
    思わぬアルスの言葉に、ルイスはふいに目頭が熱くなる。
    流れてもいない涙をふくかのように袖を動かすと、しっかりとアルスに返事を返した。
    「・・・・ありがとう・・・父上。」



    数か月後。
    彼らの元に思わぬ知らせが届く。

    それはダイロンシティという遠き場所にある街からの使者が伝えたものだった。
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