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「……ってきま~す!」
夢は、見ていなかった。黒とも白ともつかない眠りの中でふと、明るく伸びやかな声が耳に届いて、ライナ・リュートはあっさりと瞳を開いた。
木目の天井。カーテンの隙間から差し込む朝の陽に視線を向けて、ふたつ瞬く。
広いベッドの上、傍らにぬくもりはない。そういえば、ひとりで寝たんだっけ、と思いながら意味もなく伸ばした腕がシーツを滑った。
このまま目を閉じれば、もっかいすぐ寝れるなあ、と頭の隅で考える。起こされていないということはまだ、寝ていていい時間なのだろうし。
(うーん……)
選択肢に、うっすらと二度寝の文字は浮かぶ。前の自分だったら迷わずそっちを選んでいたどころか、他の選択肢はなかっただろうなと思いながら、ライナは身体を起こした。
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