ガーデンバース(仮) 難儀なことだ。
工藤新一は自分の膝小僧を眺めながら古風な言い回しが頭に浮かんだ。全く自分は面倒な体質になってしまった。
新一の膝頭には一輪の花が咲いている。比喩でも何でもなく、実際に新一の皮膚の上には柔らかな質感をもった花が存在した。それは目にも鮮やかな黄色のマリーゴールドだった。
「花言葉は絶望か……」
マリーゴールドのポジティブな花言葉は可憐な愛情。もうひとつの象徴は絶望。
今の新一には、このネガティブな意味合いが最適の気分だった。
新一は咲ききって膝からはらりと落ちた柔らかな花をごみ箱に向かって放り投げた。
花はごみ箱のふちに弾かれて床に転がる。
「クッソ……」
花を咲かせたあとは立って拾い直しにいく気力も体力も残っていない。
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