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    くろん

    @NKGJER

    サン星サン沼にずぶってる20↑

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    くろん

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    サンポワンライ参加作品 お題「再会」でサン星
    相性の悪い酒に当たって泣き上戸になったサンポが星ちゃんに迎えに来てもらったと思ったら最終的にプロポーズの予約をすることになる話。

    #サン星
    ##未ログ

    酒は飲んでも飲まれるな「……うぅ、う……っひ、うぇ」
     星の目の前には、カウンターに突っ伏してぐずぐずと泣きぬれている青と赤のでっかい固まりがひとつ。
    「……何コレ」
     思わず指をさしながら振り返ると、馴染みの酒場の店主は困ったように頭を掻いた。
    「いやあ、初めて仕入れた酒があったから勧めてみたんだが、どうにも合わなかったようでなぁ。ほんの二、三杯呑んだだけでこんなになっちまって」
    「なんで私を呼んだの」
    「だってそいつ、嬢ちゃんの名前をずっと呼んでるもんだから」
     よく聞けば、ただ泣いているだけかと思ったその男は嗚咽の合間合間でうわ言のように星の名前を呟いている。
    「そりゃ普通の女の子にゃとても『連れて帰ってくれ』なんて言えねぇけどよ、嬢ちゃんなら運べるだろ?」
     私だってか弱い美少女であると主張したいのは山々だったが、残念なことに――本当に残念なことに――運べてしまうのは事実だったので、星は了承の言葉の代わりにただ諦めのため息をついたのだった。
     まったく、すっかり夜も更けてシャワーも済ませ、これからベッドでゴロゴロしようかという時に、何が悲しくて酒場まで呼びつけられてこんな重い固まりを運ばなければならないのか。日頃の行いの良さとは少しも釣り合わない理不尽だと、星は己の不運を嘆いた。
    「サンポ、帰るよ」
    「……?」
     返事などはなから期待していないが一応声をかけてから肩に手を置くと、その感触に反応したのかサンポがのそり、と顔だけを上げた。焦点の合わない目を揺らめかせて、恐らくそうとは気付かないままに星のことをじっと見つめている。
    「特別サービス。引きずるのは止めて負ぶってって上げるから、さっさと起き上がって」
    「……せいさん?」
    「そう、私。だから早く――」
    「せいさん……!」
    「わっ」
     突然がばり、と起き上がったと思ったら、突進するかのような勢いでサンポが星の腰に抱き着いてきた。涙声で何やらんふふふと笑いながら、腹のあたりに頭をぐりぐりと押し付けている。
    「……離してよ、帰れないでしょ」
    「いやです、かえりません、ぼくはこのまませいさんといっしょにいるんです」
    「私も同じところに帰るから」
    「……ほんとですか?」
    「ほんとほんと」
    「にかいくりかえすなんて、うそくさいです!」
    「ほんとだって。信じないなら一人で帰るよ」
     べりっと無理やり引き剝がして背を向ければ、サンポは慌てて星の腕をわしづかみ、「かえる! かえります!」と必死で言い募ったのだった。


     あの後また多少のすったもんだがありながらも妙ににこやかな笑顔の店主に見送られて店を出た星は、人気のない夜道を宿へ向けて歩いていた。サンポはついさっきまで泣いていたのが嘘のように、星の背中で上機嫌に鼻歌なんぞを歌っている。普段お札を数えているときに比べていささか調子っぱずれなその歌をBGMに、星はただもくもくと歩を進める。酔っ払い相手にこれ以上不毛な会話をしようとは思わなかった。しかし。
    「いたっ」
     突然肩のあたりに痛みを――それも噛みつかれたような痛みを感じたとあれば話は別だ。
    「ちょっと、何するの」
    「しかえしです」
     がじがじ、となおも星の肩を噛みながら、サンポは一転してむくれたような声で言う。
    「は? いったい誰が親切に迎えに来てあげたと思って――」
    「こいびとのらいほうをひとづてにきかされたぼくのきもちを、おもいしればいいんです」
    「……」
     恋人。確かに前回ベロブルグを訪れたときに、サンポから告白のような何かをされ、星からはOKの返事らしきものを返し、ふたりは恋人と呼んで差し支えない間柄になっていた。そのあとすぐに列車はヤリーロ-Ⅵを離れたため、今回はいわばふたりの関係性が変わってから初めての再会ということになる。
     にもかかわらず星は、今日ベロブルグに来ることをサンポに知らせていなかった。事前連絡はおろか、着いた後で会いに行くことさえしていない。それをなじられれば、星に反論の余地はなかった。
    「……ごめん。言い訳になっちゃうかもしれないけど……恋人、になってから会うの初めてだから、どうしていいかよく分からなくなっちゃって……それで連絡しそびれちゃったんだ。今日一日で心の準備をして、明日会いに行くつもりだった。……こんな形だけど、会えてよかったと思ってるよ。……あと、お酒のせいだとしても、私のことで泣いてくれたのは、ちょっと嬉しかったな、なんて」
     訥々と、星は素直な心情を吐露する。ただ相性の悪い酒で悪酔いしただけかと思いきや、星が連絡をくれないからだなどと言うのだから、申し訳ないと思う反面、どうしても浮かれてしまう。高陽する気持ちのままに端から聞けば甘ったるく、自分としては単に思ったことを言っているだけな台詞を吐き出していた星は、ふとサンポが何の反応も示さないことに気づいて言葉を止めた。
    「……サンポ?」
     呼びかければ、返事の代わりに穏やかな寝息が聞こえる。記憶をたどってみれば、「おもいしればいいんです」の言葉を最後にサンポの声を聞いていない。恐らく恨み言を言い放ってそのまま寝てしまったのだろう。
    「……何それ、私ずっとひとりごと言ってたってこと?」
     やっぱり酔っ払い相手の会話など不毛だ。改めて痛感した星は、今度こそ黙って歩行に専念することにした。


     翌朝。宿屋のベッドの上で目を覚ましたサンポは、隣に星が寝ているのに気づいて乙女も真っ青な甲高い悲鳴を上げた。
    「……うるさ」
     安眠を蹴破られた星が不機嫌そうにサンポをねめつける。
    「せ、星さん、こここの状況は、いったい」
    「覚えてないの?……こんなことまでしたくせに」
     そう言いながら星が髪を掻き上げて露にして見せた肩には、どう見ても歯型にしか見えない痕がくっきりとついていた。
    「えっ……」
     サンポには全く身に覚えがない。記憶にないうちにそんなものを付けていたなど大問題だが、かといってサンポ以外の誰かが付けたとなればもっと大問題だった。だから当然、覚えがあろうがなかろうがそれはサンポが付けたものに違いないのだ。
    「……せ、責任は取ります! 結婚しましょう!」
     思わず勢いあまってそんな宣言をしたサンポに、星はひとしきりげらげら笑った後、腹筋をひくつかせながらネタばらしをした。サンポは盛大なため息をついてへなへなと脱力する。
    「……それならそうと最初から言ってくださいよぉ」
    「言う前にあんたがプロポーズしたんじゃない」
    「あ、あれは無効です無効! 取り消させてください!」
    「ふぅん……いいんだ? 取り消しちゃって」
     どこか蠱惑的に微笑む星に、「やっぱり有効で……」と言い出したくなるのをサンポはぐっと堪えた。
    「ええ……いずれちゃんと仕切り直しますんで」
    「ふふ、分かった、期待しないで待ってる」
     そこは期待しててくださいよ! そんな抗議を後目に星がさっさと二度寝の体勢に入ったので、サンポも諦めてまたその隣に体を横たえた。二日酔いに痛む頭とあどけない星の寝顔に、これはきっと眠れないな、と思いながら。
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    くろん

    DONE余裕ある大人の態度で星ちゃんを口説くサンポとばっちり口説き落とされる星ちゃんとその後の逆転劇と星ちゃんの独占欲の話
    かわいいあんたは私だけのもの 未だに時折何かの間違いか、そうでなければ夢か何かかと思ってしまうが、私は今、サンポといわゆる「お付き合い」というものをしている。
     サンポから好きです付き合ってくださいという申し出を、少しばかり遠回しな言い方で受けた時、私が真っ先に感じたのは困惑だった。
     私には「好き」というものが分からなかったから。
     私の知っている好きとは星穹列車の仲間や開拓の旅で出会った人たちに向くものであり、それはきっとサンポの言う好きとは違うものだろう。私は彼らと恋人のように接したいとは思わない。
     イエスノーの返事の代わりに正直にそう打ち明ければ、サンポは「ならお試しで付き合うのはいかがです?」と言った。
    「お試し?」
    「ええ。僕だって始めから都合よく両思いになれるだなんて思っていません。まずは付き合ってみて、僕を好きになれるかどうか試してほしいんです。じっくり考えていただいて構いませんよ? こう見えて気は長い方ですから――ああもちろん、お試しの間は一切手を出したりはしません、誓って」
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