硝子の華青葉城西はフルセットの末、烏野に敗退した
そこからずっと岩泉の様子がおかしいと薄々だが感じていたが
監督やコーチと今後の事を話す為
松川と花巻に
「岩ちゃんをお願い」
そう伝えて控え室を出て行った
話を終え、足早に控え室に戻ろうとしていると牛島と会ってしまう
(この忙しい時に……)
ギリッと歯軋りをして彼を睨み付ける
「……絶対に覚えておけよ」
そう吐き捨て歩みを進めると青葉城西の面々を見掛けた
その中に岩泉もいたが……
足取りがおかしい
マズイ、そう思い及川は足早にバスへ向かった
バスに乗り込めば1番後ろの席で松川が手を振る
後輩たちも気まずそうな表情になっている
花巻が岩泉を隠すように座っていて
「マッキー、代わって」
そう告げると花巻と入れ替わる
「何かあったら言えよ？」
松川の言葉に小さく頷き及川は岩泉の隣に座った
項垂れ、呼吸も乱れているように感じる
「……岩ちゃん」
声を掛けても反応がない
「こっちむいて？」
その言葉にも一切反応がない
「ね、岩、ちゃ……」
「……ん、な……ぃ」
微かな声が耳に入る
「岩ちゃん？」
「決め、られなく……て、ごめ……なさぃ……」
岩泉の口から紡がれたのは謝罪の言葉のみ
カタカタと身体を震わせ、弱々しい呼吸音
こんなに弱った彼を見るのは初めてで……
「ごめん、なさぃ……ごめ、なさぃ……」
及川は悟ってしまう
岩泉が"壊れてしまった"と……
自分がバレーボールに誘わなければ
牛島を倒すなど言わなければ
そんな罪悪感が湧き上がる
及川はそっと岩泉を抱き締める
「大丈夫、岩ちゃんは悪くない……」
背中をさすりながらそう言っても岩泉の口から紡がれるのは謝罪のみ……
彼は責任感が強く、自分の事は後回しにするところがあった
だからこそ、あのトスを繋げられなかった事が岩泉の心を砕いたのだろう……
「岩ちゃんは誰よりも強くて、優しくて
俺の大切な人で自慢の相棒だよ……」
そう語りかけながら背中をポンポンと叩くと弱々しかった呼吸は規則正しい寝息へと変わっていく
それを見て及川は安堵し
「おやすみ、はじめちゃん」
そう呟き岩泉の額に口付けた