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    掃きだめ

    だれだよ
    @to_senvei

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    掃きだめ

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    走り書きなのでおかしかったら鼻で笑ってください
    この話を自創作でパロディしてぇ~

    エセSFにありがちな脳をインターネットにアップロードできるようになった世界の話をなんとなく考える 今よりも科学が発展し、今よりも貧富の差が拡大した世界で、脳を電子世界へ移植する技術が開発された。数々のテストが行われ、ついにその技術の半永久的な存続が証明されると多くの富裕層たちは物理世界に別れを告げ、新たな世界へと旅立った。

     死、苦痛、破壊、忘却、あらゆる負の側面をもつものが取り除かれたそこは人々にとってまさに楽園で、いつしかエレクトロニコ・パライソとよばれた。膨大なデータを貯蓄する物理的ストレージは、アンドロイドとごく少数の雇われた貧困層によってメンテナンスされていた。


     物理世界の存在を忘れてしまうほどに時間がたったころ…楽園では全てが順調に進行していると思われたが、脳移植に”適合”する富裕層があらかた向こう側に行ってしまったあと、ある問題が発生する。
     それは楽園の住民の、避けられないジレンマである。ありとあらゆるものが在るこの世界で、生の対義、幸福の対義、創造の対義、そういう”何か”を探し出すことができなかった。人々が遠い昔に消滅を願った事象こそ、いま彼らが最も求めているものになった。
     
     求めてやまない楽園の住民は話し合い、一つの解法を導きだした。それは物理世界に唯一残るメンテナンスの責任者、かつて脳移植に”不適合”とされた貧困層の子孫の脳を完璧にスキャンし、アップロードさせること。
     彼らは自分たちに欠けた「何か」を持つ最後の人間に脳移植させるよう、アンドロイドに命令する。


     その少年は死の記憶を、血の記憶を、破壊の記憶をもっていた。何も忘れてはいなかった。富裕層が旅立った後の世界を、凄惨な略奪を、殺し合いを、戦争を忘れはしなかった。残された人間たちは憎しみあったが、同じくらい人間という大きな生き物の行く末を、生誕と死滅を、運命を愛した。彼は忘れてはいなかったのだ。

     アンドロイドに連れられ、少年は巨大なコンピューターを前にした。楽園はすぐ目の前だ。彼が旅立てば、死も苦痛も破壊も忘却も人間の忠実な奴隷となり、エンターテインメントとして生まれ変わる__

    はずだったのだが。アップロードが完了する直前に、彼は暴れだして装置を壊そうとした。しばらくして非常事態規約に従ったアンドロイドに鎮圧され、処分された。
     亡くなる間際に、かろうじてアンドロイドに聞こえる声で、こう話した。
    「自分だけが幸せになろうとするその利己的な魂を、狡猾な脳を、肥えた腹を、俺たちはずっと許してこなかった。これは叛逆だ。これだけはお前たちには奪わせない。永遠に、俺たちだけのものに…」

    少年は自分の脳と記憶とともに心中してしまった。楽園の住民はそれを知る術を永久になくしてしまったのだ。失われたものは、アンドロイドの推測によると人間性というものらしい。この単語がどういった内容を意味するのか、もうみんな忘れてしまった。

    そうして、楽園は完成した。

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