茹だる、縺れる、繋ぎ止める夕方、教室の窓の外に、薄曇りの空が広がっていた。
5限の授業が終わってしばらく経つというのに、誰もいない教室に残っているのは、教師と生徒、ただ二人。
「……おい、聞いてんのかよ。バカ教師」
「は?なんだそれ、喧嘩売ってんのか相良?」
職員室での報告書を片手に、眉を寄せて振り返る東條恵。
彼女の声はいつも通り低く、少しだるそうで、けれど芯の通った調子だった。
教壇のすぐそば、窓際の机に腰をかけている相良猛は、どこか不貞腐れたように足を組み、煙草でも吸いたげにため息を吐いた。
「お前さ、ほんと鈍いよな……」
「はあ?」
「……ったく、誰がそんなヒール履いてくんだよ。色気もねぇくせに、調子のんなっての」
わざと棘のある言葉を吐く。
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