抗う者達⑪ ──現在地、日本百名山の一つに名を連ねる某山山頂。
天候は快晴無風だ。格好のトレッキング日和だった。
山からの景色はとてものどかで、少し冷えた空気も山登りで温まった体に心地好い。
とても平和な登山だった。ハンデがあるにしても、志海にはとてもぬるい登山であった。
「梓ちゃんとK2さんも来れば良かったのになぁ」
えべたんがぼやく。もう何度目だろうか。いい加減諦めればいいのに、うるさいなぁ。
「仕方ないだろうが。穂高は仕事だし、K2は同じ時期に他の山登る予定だったって言ってただろう」
コージーがわずらわしそうに返す。……コージー。志海はやっとこの金髪の青年の名前を覚えた。
「今頃エベレストかぁ。療養から復帰して、もうエベレストとか凄いよねぇ」
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