I YOU .物語のようには上手くいかないと思っていた。だって。
「あの子は人魚姫で、僕はセイレーンなんだから。」
海面を見上げながら僕は体を水中に身を預ける。
セイレーン。上半身は人間で下半身は魚の姿をしている。その歌声は航海中の人間を惑わし、遭難や難破に遭わせる。歌声に魅惑された船人たちはセイレーンによって食い殺される。恐ろしい怪物。
あの人から聞いた「セイレーン」のこと。
間違ってはいない。まだ、僕は人間を食べたことも食べようとも思ってない。でも、仲間の皆は人間を食べている。
「もう何十人、何百人と被害が出続けている。このままではいけない。私が何とかしなければ。」
灰色の瞳に確固たる決意を宿した君。
あぁ、なんてーーー
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