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    tsukiko

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    tsukiko

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    裏垢で載せた理解くんからふみやへプロポーズする話を少し修正しました。理解くん目線にしています。ハピエン

    プロポーズ 仕事を今まで以上にがんばって婚約指輪を用意した。頑張った。本当に頑張ったと思う。あとは言葉にするだけ。それなのになかなか言う勇気も出ず、そして何かとタイミングが悪い。二人きりになれる機会が全くない。ケースの中でキラキラと輝いているプラチナが美しい指輪を眺めて深いため息をつく。
    「どしたの?」
    「うわぁ⁉︎」
    聞き覚えのある低い声に驚いて手のひらからこぼれ落ちたケースはそのまま川の中へ消えてしまう。どうしよう、どうしよう。拾わなきゃ。でも今ここで川に行くのは…。何よりバレたくない!絶対にバレたくない!
    「…なんか落とした?」
    「おおおお、落としてなんかないですよ」
    「ため息ついてたけど?」
    ?じゃないですよ!ふみやさんのために頑張ってるんですよ!それが今川の中に消えていきましたけど!あぁ本当にタイミングが悪い…。クソ、夜中に…それか早朝に探すしかない。
    「いいえ、なにも。ほら、帰りますよ。門限が近いです」
    「え、まだ十七時」
    「もう十七時です」

     翌日、空が明るんできた頃。川へざぶざぶと入って落ちた場所の周りを探す。気温が高いとはいえ朝方の川は身に染みる。
     ケースはあった。しかし中身がない。絶望的だ。必死に探すも見当たらず、そろそろハウスに戻らなければならない時間になったので続きは夜に探すことにした。みんなには残業だと言おう。嘘は嫌だがこればかりは仕方がない。


     朝と夜、毎日探した。爪が割れてきた。正直指先も痛いしずっと中腰で腰も痛い。なんで見つからないんだ。もしかしたら落としてないかもしれないと全ての洋服のポケットも見たがやはりなかった。虚しくなってくる。


    (その頃川の周辺で近頃不審な人物がいると噂になるが、理解はそれが自分だとは思っていない)


     何日目かの早朝、いつものように家を出て川へ向かう。もう半ば諦めてはいた。諦めてはいたが足がどうしてもここへ向かう。頭の中ではそうでもきっと心では違うのだ。
    川へ一歩入った時だった。

    「理解」

    「ふみやさん…どうして」
    日が昇る前の薄暗い時間、朝弱い彼が起きてくることなんて絶対になかったのに。
    「理解だろ。毎日この辺うろついて不審者扱いされてんの。捕まるよ」
    「…不審者?私が?」
    「毎日男が一人朝と夜に川で何かしてるって噂になってる。そろそろパトロールでも来るんじゃない?」
    「……それは、知りませんでした。反省します。でも私は、やらなきゃないので」

    また一歩川へと足を進める。

    「だから、なに探してんの」
    「言えません」

    ふみやさんが私の腕を掴んで離さない。

    「あん時何か落としたんだろ。俺が声かけたから落としちゃったんだろ」
    「違います。私が手を滑らせただけです」
    「手ぇ怪我してまで探すもんなの?みんなに嘘ついてまで夜遅く帰ってきて、そんなに大事なら手伝…」

    「いらないですってば‼︎」

    彼の手を乱暴に振り払った。振り払ってしまった。

    「なに…そんなにキレてんの?」



    「…勝手にしろよ」

    ひどく冷たい声が真上から降り注ぐ。

    違う、違う、そうじゃないんだ。違う、待って

    声が出るより先に体が動いた。帰ろうとする彼の腕を掴み引き止める。

    「なに?」
    「……今の、対応は間違っていました。申し訳ありません」

    ふみやさんは返事をしなかった。
    沈黙が痛い。心がちくちくする。

    「…指輪」
    「?」
    「指輪を…探してるんです」

    あぁ。言ってしまった、こんな形で…あなたにそんな顔をさせてまで…怒らせて…最悪だ。本当に

    「あなたに…愛を誓おうと。…婚約指輪を買ったんです。…なくしてしまいました」

    項垂れたままその場にしゃがみ込む。緩やかに流れていく川の水が衣服に染み込んでくる。冷たい。重い。

    「もっと素敵な場所であなたに渡したかった。どんな顔をするのか見たかった。告白は先を越されてしまったから、結婚の申し出は私からと…決めていたんですが…。なにひとつできなくて…」

    どうしよう…泣いてしまいそうだ。どこまでも格好がつかない。

    冷え切った頬にじんわりと温もりが触れる。顔を上げるとふみやさんが頬に手を添えてじっと見つめてきた。慈しむようなそんな目で。

    「理解」
    「……はい」
    「探してたのって…これ?」

    差し出してきた手のひらにはずっと探していたあの指輪。

    「え、なん…で…ふみやさんが、持ってるの?」
    「……あの時、理解が川になんか落とした時、俺の方にも何か飛んできた。理解にしてはでかい指輪だなって思って、形見がなんかだと思ったからすぐ返したかったんだけど。…お前朝いないし、夜は帰ってこないし、休みの日も全然家にいないし」
    「……な、なん…で」
    「まぁまぁ」
    「まぁまぁ、じゃない。濁さない」

    なんだ、結局あなたが持っていたのか。見つかるわけがなかった。早く教えてくれたらこんな指も腰も痛めずに済んだのに、言ってくれたら…。違う。これは私のわがままのようなプライドのせいだ。元はと言えば私が、もっと早く、彼に

    「…ぃ、理解」

    「は、はい」

    彼は私の左手をそっと手に取り、薬指に指輪をはめた。

    「はは。ぶかぶかだ」
    「…そりゃ、そうですよ。あなたの指のサイズに合わせてるんですから」

    自分の細い指の周りを太陽を浴びてキラキラと輝く指輪が揺れる。目の前にいるふみやさんに視線を戻す。

    あぁ、この紫の目にいつもやられてしまう。

    「理解」


    またあなたに一歩前を歩かれる。先を越される…きっとこれからもそうなんでしょう。…そして私は、懲りずに今日のようなことを繰り返す。でもそれくらい、あなたが愛しい。


    「ふみやさん。…私と結婚してくださいますか?」

    「…うん」






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