短景『翠髪』 その日、ルーク・サリバンがジェイミー・ショウを訪ねたとき、部屋には珍しく先客があった。
「また来たのかよ」
開け放しの玄関ドアから中を覗いたルークへ、いじっていたスマホから顔を上げたジェイミーが、呆れたように言う。
夕方の西陽が、玄関から部屋の奥に向かってまっすぐ差し込んでいた。その光を遮るように、長い脚が投げ出されている。玄関を入ってすぐ、キッチンの椅子に浅く腰掛けていた家主は、「連絡してから来いよなあ」と小さくぼやいて、またスマホに目線を戻した。
「っせぇな、居たら飯でも誘ってやろうかと思って顔出しただけだっての」
「一人じゃさみしくって飯も食えねぇって? しょうがねえな、脳筋くんは。可哀想だから付き合ってやるよ」
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