庭球浪漫パロ「明日はくれぐれも粗相のないように。
この婚約はお前の将来だけではない、我が一族の未来がかかっているからな。」
もう耳にタコができるくらい聞き飽きた父の忠告に辟易としながら、大人しく「承知致しました。」と答える。
いつもは私の将来なんて我関せずといった顔をする父の気が、こうも確かではない。その理由は、明日の私のお見合いにある。お見合いの相手は陸軍将校の手塚国光。
おおかた父の狙いはこうだろう。まず私との婚約で、陸軍でも切れ者と名高い彼をこの一族に取り入れる。そうすることで父は軍の内政の掌握、そして一族の安泰を図るのだろう。
「軍部でそんなことしている暇があるなら、さっさと戦争なんて終わらせて欲しいなー」
そう呑気に呟いて、明日の気を紛らわすことで精一杯だ。向こうもこのお見合いが政略結婚を目的としたものだなんて、きっと分かっている。
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