さやけき歌が響く夜 どさり、と重い音がした。丁寧におろそうとしたのに、手元が狂ってしまった。長谷部は手足を投げ出したまま、畳の上に転がっている。
「ごめん!痛くなかった!?」
審神者──内村光一は、慌てて長谷部のそばに跪き、そっとその頭に触れる。痛くなかっただろうか。長谷部の顔を覗き込んで、不安げな表情を浮かべた。
長谷部は朦朧とした眼差しを向ける。
「……大丈夫、です」
はあ、と長谷部の口から熱のこもった吐息が漏れる。重たげに腕を動かすと、自分の額の上に置いた。
話は2時間くらい前に遡る。
その日、本丸ではささやかな宴席が設けられていた。
この本丸の主である光一は敬虔なカトリック信徒だ。日頃から静かな暮らしと慎ましい食卓を好み、「清貧」という言葉を体現するかのような青年だった。
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