ある日、冨岡が彼と同い歳くらいの落ち着いた可愛らしい女と一緒に歩いてる姿を見た。お互いに優しい笑顔を向け合っていてとても似合いであった。
蝶屋敷退院後、入院中に少し交流があった冨岡が週に一、ニ回くらいの頻度で風柱邸へ訪れていた。現役の頃は、ぴくりとも動かない表情筋であり、協調性もなく、人を見下した高慢で嫌な奴という散々な印象であった。しかし、蝶屋敷での療養期間を経て、本当は過度に自己評価が低い、ただの口下手な奴ということがわかった。そしてあの頑固な表情筋も、今は少し微笑を浮かべられるくらいになった。現役時代に比べればかなりの進歩だろう。
さて、冒頭に戻る。俺は見てしまった、いや見えてしまった、冨岡の明るい未来が。大切な者を守れたお前は、判断を誤らなかったお前は、色んな奴から慕われ、笑顔を振り撒く。その明るい未来に俺の存在はついぞ見えなかった。
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