少しあかるい夏 夏は嫌いだ。
何より、このうんざりするほど強烈な暑さと、全身からじわじわと噴き出してくる汗、汗、汗。シャツがべったりと肌にはりつく感触は、不快で仕方がない。子供の頃は何とも思わなかった蝉の鳴き声すらも、今はただ、僕を息苦しくさせるばかりだった。
改札を出ると、夏のぎらぎらした白い日差しが一斉に降り注ぎ、一瞬目がくらんだ。今まで冷房が効いた快適な電車の中にいたせいか、急な気温差でこめかみの辺りがズキズキと痛む。
腕時計をちらりと見ると、まだ十五時過ぎ。塾が始まる時間までかなり余裕があった。
そうだ、いつものように自習室で勉強でもしていよう。
そう思い、足を踏み出した瞬間、ふいにめまいがして、僕はその場に立ちすくんだ。
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