甘え上手な彼 トキオが一人暮らしを始めてからというものの、ユウキはずぼらなトキオに変わり料理を作りにきたり、散らかされた部屋を片付けたりと恋人としての甘い時間というよりは母親や家政婦のようなことをして帰るということが日常になりつつあった。そんな時――、トキオはいつにもまして不機嫌だった。
「ねえ、それまだ終わらないの」
「えっ」
トキオが後ろからユウキを抱きしめる。洗い物をしていたユウキはそのまま固まったように動けなくなってしまう。
「と、トキオくん!?」
「ねえ、まだ終わらないの?」
「も、もう少しかなあ?」
「ふうん、そう」
そう言いながらもトキオは抱きしめたまま離れる様子がない。
「あ、あの…トキオくん」
「なに」
「もしかして…このまま?」
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