マーキング「苦しいか?」
「いや、もうちょっと締めていい」
白を基調とした布地にピンク色の淡い牡丹と蒼居蝶が描かれた婚礼衣装の帯を魈が器用に調整していく。
季節は五月雨時期。しとしとと降る雨が湿度をあげ、肌寒くもあるが蒸し暑い時期だ。
そんな時期に蠱毒は鍾離が用意した婚礼衣装に袖を通していた。無論、魈でも良かったのだがより身の丈が女人に近しい方が良いだろうと満場一致で蠱毒が着ることとなってしまった。
いつも緩く仙の衣装を着ている蠱毒には、少しばかり窮屈あではあるが妖魔退治の任務となれば致し方ない。
望舒旅館にある客室の一角の鏡台の前に座り、その後ろで魈が蠱毒に着物を着せ、ギュッと帯を強く締める。
仙術で長くした白から毛先にかけてグレーに染まる髪の毛に櫛を通してまとめ髪をつくる。頭の両サイドで結い上げて丸く整える。いわゆるお団子ヘアーと言うやつだ。
814