普段の魈と蠱毒の話毎夜繰り返される妖魔達の声にならない断末魔を背に、魈はこの夜も璃月から近い地区を見廻っていた。
次の獲物を探すように月明かりだけが照らす暗闇に視線を落とす。
骨を蝕む激しい痛みと、霞む意識はそのままに、業障の影響が強くなると仄暗い闇に呑み込まれそうになる。
頭の中で常に鳴り響く、悲鳴、泣き声、怒号が混濁してきて全てが魈を呑み込もうと襲って来た時だ。
「おい、魈!」
少し高めの少年の声が、混濁した意識の魈を呼び止めた。魈の足が縺れてふらついた。倒れそうになる所を蠱毒が慌てて駆け寄って抱きとめる。
「……っ、蠱毒?」
「お前、最近見かけねぇと思ったら…。また無茶苦茶しやがって…、ちったあ、頼まれて探す俺の身にもなれよ!」
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