Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    manju_maa

    @manju_maa

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 48

    manju_maa

    ☆quiet follow

    いつか漫画で書いた現パロ金女主の続きもの

    その日の私は期待と嬉しさで心踊らせながら、待ち合わせの場所へと足を向けていた。
    休日の街は、自分と同じように仕事や学校が休みの人達で賑わっている。
    恋人同士で楽しそうに話している人、友達同士で賑やかにしている人、家族で買い物に出かけている人、沢山の人達とすれ違う。
    皆が皆、各々の時間を満喫している。
    そして、私もまたもうすぐその満喫している人達の中に混じるのだ。

    今日の十三時、街の時計台の下。
    それが、彼──ギルガメッシュとの待ち合わせの約束だった。

    待ち合わせの場所へと到着し、ギルガメッシュの姿を探し、居ないことを確認して彼が来てもすぐに分かるであろう場所に立つ。
    メールで先に到着した旨を伝えて、一息。
    ギルガメッシュは仕事で毎日忙しそうにしている人だ。今日も待ち合わせの時間までは仕事だと言っていた。
    「それなら休みの日でも平気だよ」と言うと「時間は作る。貴様は構うな」との事だった。

    「でも、ギルと会うのも久しぶりだな…ふふっ」

    楽しみな気持ちが抑えきれずに一人、笑みを零す。
    「今向かっている」という短いメールを読んで、どこから彼が来るのかと辺りを見渡しながら、彼の到着を待つことにした。

    …のだが。

    「お姉さん、一人?」
    「良かったら俺らと遊ばねえ?」
    「お金は出すからさぁ」

    視界の片隅に入った時からこちらを見つめていやらしい笑みを浮かべていたので薄々嫌な予感はしていたが…。
    本当にテンプレのようなナンパ男に囲まれてしまった。
    後ろは時計台、前方と左右には男達。完全に逃げ道はない。周りの人達もこちらを見てはいるが関わらないようにと少しずつ遠ざかって行く。
    完全に詰みだ。

    「あ、あの…私、人を待ってて…」
    「いいからさ。行こうよッ…!」
    「…っ!」

    男の一人に手を引っ張られる。
    乱暴にグイッと引かれたので腕が全体的に痛む。
    …これはどうしたものか。

    「──おい」

    と、困り果ててどうしたものかと思った途端のタイミングだった。
    聞き覚えのある、不機嫌らしく腹の底から出たような低い声。

    「あ?」
    「んだよ、邪魔すんじゃね──」

    邪魔されて機嫌を損ねた男達が振り返る。
    その視線の先には、

    「邪魔だ。さっさと失せよ」

    聞いていた通り、仕事終わりを物語るようにネクタイを緩めるなどして着崩したスーツ姿のギルガメッシュが男達を睨みつけるように見下ろしていた。

    「ヒッ…!?」
    「はっ、はい!!」

    その自分達を睨みつける視線があまりにも恐怖だったのか、男達は小さく悲鳴を上げながら逃げるように走り去っていった。
    元々彼の威圧的なオーラと蛇を連想させる赤い瞳と鋭い目つきもあって目力は強かったのだが、今はかなりの睡眠不足と疲労が祟っているらしく目の下の酷い隈と半開きの目がそれを余計に強くしていた。

    「…ギル…」

    ギルガメッシュは男達に目もくれず、まるで何事もなかったかのように私の前まで歩み寄るとその足を止めた。
    …いや、改めて見ても本当に凄い隈だ。一体何徹目なのだろうか。

    「あの、隈凄いよ。顔色悪いし…大丈夫?」
    「別にそこまでのことはしておらんぞ」
    「最後に寝たのいつ?」
    「…………」

    ギルガメッシュは考えを巡らすように、頭をポリポリと掻きながら視線を横にする。

    「三日…いや、五日か…?…もうまったく分からん。仕事を片付けていた以外の記憶がない」
    「それもう頭が限界に近いやつだよ…なんでそんな状態で来たんだ…」

    『はぁ』と息を吐く。
    しかしギルガメッシュは「何を言っているんだ」と言わんばかりの顔で、

    「そういう約束だったろう」

    当然のように言いきった。

    「…!」

    嬉しさを隠すように少しだけ顔を伏せた。
    ……が、すぐにハッとして頬に帯びた熱を首を振って払い飛ばす。

    「やっぱりダメ!そんな状態でこれ以上負担かけたらぶっ倒れちゃうよ!ここからなら私の家のが近いから帰って寝よう!」
    「何を言っているたわけ。あと二日はイケるぞ我は」
    「そういう強がりは今はいいから!ほら行くよ!」

    ギルガメッシュの背中を押しながら、私は来た道を戻る。
    最初は文句を言い続けていたギルガメッシュも次第に大人しくなり、彼の手を引きながら自宅があるマンションにたどり着いた頃にはもう何も話さなくなっていた。
    玄関の扉を開けて中に入り、扉が閉まるのを確認して、一足先に靴を脱いで家に上がる。

    「ベッドの用意するから座ってて」

    ――バタン。
    先に部屋に入ろうとした私の後ろで、大きな何かが倒れるような音が響く。

    「…え?」

    振り返ると、そこには床に倒れ伏したギルガメッシュの姿があった。

    「ッ!ギルっ!」

    慌てて駆け寄って、身体を揺する。
    服の上からでも分かるくらいに熱くなった身体は、気を失ったまま浅い呼吸を繰り返していた。

    「嘘…凄い熱…!もうっ、だから言ったのに!」

    寝かせてあげたいのは山々だが彼の身体は大きく、私だけの力ではベッドに運べない。
    私はすぐさま彼の親友であるエルキドゥに電話をかけて状況を話した。


    〇 〇


    電話をかけて間もなく、医者とともにエルキドゥは家に来てくれた。
    依然目を覚まさないギルガメッシュをベッドに運んでもらい、診察してもらう。
    結果は勿論ながら過労によるものだった。
    しっかり休ませれば問題ない、と言ってくれた先生にお礼を言いながら持ち場に帰っていく後ろ姿をエルキドゥと見送った。

    「………ここ最近は、特に忙しかったんだよ。書類の提出とか手続きとか、取引先の商談とか、色んな事が狙ったように押し寄せてきててね。ギルはそれをほぼ一人で片付けてたんだ。多分、一週間は家にも帰ってない」

    一人暮らしのワンルームマンションである以上、リビングと寝室は同じ部屋の中にある。
    机を挟んで向かい合って座りながら、後ろにいるギルを起こさないように声を小さくしながらエルキドゥは話した。
    ギルガメッシュとエルキドゥは同じ会社で、ギルの補佐を勤めている人だから仕事中の彼の様子はエルキドゥが一番知っている。

    「ギルが働き詰めで限界に近いのは分かってた。だから期限を延ばしてもらおうって提案したんだよ。でもギルはそれを蹴ったんだ。『今日だけは絶対に外せない用事がある』の一点張りで」
    「…!」
    「今回の約束は君の方から誘ったんだってね。ギルにはそれが嬉しかったみたいでね」


    『へえ、白野の方から誘われたんだ。珍しいね』
    『ああ。我が連れ回してやらねば楽しむことすら分からぬような人形同然の娘だったが、ようやく人並みになって来たというところよ』
    『もちろん行ってあげるんだろう?』
    『無論だ。欲というものを知らぬあやつが初めて何かを望んだのだ。他でもない我がそれを見届けずして、誰が見届けようか』


    「って」
    「ギル…」

    ギルガメッシュはギルガメッシュなりに、今日という日を大切なものにしてくれていた。
    疲労で記憶が曖昧になっていても、今日の約束だけはハッキリ覚えていた。
    あんな身体だったのに、それを押し殺して来てくれたのだ。

    「まあ白野の家に入って我慢してた力が一気に抜けちゃったんだろうね。人前で倒れるなんて、彼のプライドが許さないだろうし」

    言いながら、エルキドゥは立ち上がる。
    見上げる私を微笑みながら見下ろして、

    「会社に戻るよ。ギルのこと、よろしくね」
    「うん、ありがとう。忙しい時に呼びつけてごめんね」
    「大丈夫。ギルが一通り片付けてくれたおかげで今は余裕があるんだ。……丁度いいや。一週間は来なくてもこっちでやってけるから、これを機にゆっくり休むようにって起きたら伝えておいて」
    「分かった」

    最後まで笑って手を振ってくれたエルキドゥを見送る。
    途端に静かになった家の中。私は部屋に戻って台所で冷えた水にタオルを浸して、ベッドに近づいた。
    浅い呼吸を繰り返しながら、熱が高いようで額に貼った熱さましのシートがあるにもかかわらず汗が頬を伝っている。
    タオルでその汗を拭ってあげると、一瞬顔を歪めた後にゆっくりとギルガメッシュは目を開けた。
    いつもの覇気が全くない、弱りきった視線で辺りを見渡しながら口を開く。

    「……ここ、は」
    「私の家。倒れる前に家に帰ろうって言ってたじゃないか。覚えてない?」
    「…………」

    ギルガメッシュは返事をしない。
    どうやら本当に『待ち合わせに行く』ということだけを頭に残していただけだったようだ。
    ここまで来ると嬉しいを通り越して呆れてしまう。
    無理してまで来なくても断ってくれればよかったのに、という言葉が喉まで来たが、それを言っては彼の思いを無碍にしてしまう。

    「エルキドゥが一週間お休みでいいって。ギルの家のベッドより寝心地悪いだろうけど、それで良ければここでゆっくり休んでしっかり身体治してよ。付き合うからさ」
    「……いいのか」
    「何が?」
    「欲しいものが、あったのではないのか」
    「─────」

    …そう。
    人が持つ欲というものがよく分からない私を見かねたギルガメッシュが『何か欲しいと思うものがあれば一つ買ってやる』と言ったのが事の発端。
    その時の私は何も思いつかずに、『探してみるよ』と言ってその場はそれで話が終わっていた。
    そして、ある時に絶対に欲しいと思った『それ』を見つけたんだ。
    だから彼に欲しいものが見つかったということを話して、今日はそれを一緒に買いに行く予定だった。

    変なところで律儀な彼に、思わず笑ってしまう。

    「そんなの今日じゃなきゃいけないわけじゃないよ。それに無理してるギルには買ってほしくない。…元気になったギルに買ってほしいから。だから、早く元気になって、それから一緒に買いに行こうよ。ギルが元気になるまで、待ってるからさ」
    「………………………そうか」

    短くそう言って、大きく息を吐いてからギルガメッシュは目を閉じる。
    …浅い呼吸はすぐに寝息に変わった。

    「覚えててくれて、ありがとう。ギル」


    〇 〇


    そうして丸々一週間かけて、ギルガメッシュはしっかり休んですっかり元気になった。
    雲一つない快晴の下で、改めて私達は約束を果たすべく二人で並んで、可愛いものが沢山揃えられていると女性に人気を集めている雑貨屋の前に来た。
    店に入り、私は以前立ち寄った時に見つけた『それ』を探す。
    幸いまだ売れてなかったようで商品は残っていた。

    「あったあった。これだよ。…これをギルに買ってほしいの。ペアセットのマグカップ」
    「………マグカップ?」

    私が指差すマグカップを見て、ギルガメッシュは露骨に大きく溜息をついた。

    「貴様な、この我が献上してやると言っているのだぞ。こんな安物、お前のハサンたる貧乏臭い矮小な小銭入れの中に収まる端金であろうと難なく買える値段であろう」
    「ギルが買ってくれるから意味があるんだよ。値段なんか関係ないの」
    「そもそもペアとはなんだペアとは。一つは貴様が使うとして、もう片方は誰に使わせる気だ。何処の馬の骨とも知らぬ雑種のために払う金なぞ持ち合わせてはおらぬぞ」
    「何言ってるの。そんなのギルに決まってるでしょ」

    棚に飾られたマグカップが梱包された箱を手に取って、ギルガメッシュに差し出す。

    「ギルが私のために買ってくれたマグカップを、私とギルで使う。そのためのマグカップが、私は欲しい。どう?」
    「………………」

    予想外にも自分の分とは思ってなかったらしく、珍しく鉄砲玉を食らった鳩のような顔で面食らっているギルガメッシュだったが、すぐに、

    「フッ、よかろう。…貴様らしい上等な選択だ」

    満足気に笑いながら、箱を受け取ってレジへと持って行ってくれたのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖😭💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    manju_maa

    DONEタイトル通り。二番煎じに二番煎じを重ねてテンプレを煮詰めたような話。たぶん主明
    ※ペルソナとか異世界とかなんもない本編とは全く関係ない謎時空
    ※明智が架空の病気(※ここ大事)で心臓弱い子
    ※明智ママがガッツリ出てくる。
    ※なんでも許せる人向け
    小学生の病弱吾郎くんと蓮くんが出会う話①この街には小学校の登校路から外れた道を行くと、低めのフェンスに囲まれたかなり大きい家がある。アニメなんかでよく見るお屋敷のそれ。道路も公園も、なんなら住宅も少ないその区域に静かにひっそりとそれは佇んでいた。
    フェンスの内側は芝生が生えた庭があって大きな桜の木が一本生えている。花見し放題だななんて思いながらボーッと眺めていたある日、飛び交う桜の花びらに混じって木の陰に隠れていた屋敷の二階の窓から外を覗く奴が居ることに気づいた。
    チョコレートのような、牛乳をたっぷり入れたココアのような、そんな茶色の髪を風で揺らしながら。夕方近いとはいえまだ太陽が昇っている時間帯にパジャマの上からカーディガンを羽織るという格好で、そいつはずっと外を眺めていた。髪は長いし顔も女の子みたいで、下から見上げるだけじゃ性別は分からない。年齢は多分同い年くらいだと思う。
    35875

    manju_maa

    PROGRESSごろうくん視点。獅童編中盤の全カットした空白の二週間の話の一部とヤルオ討伐後の話。「」ない。
    本当は本編に入れたかったけど時間が足りなくて泣く泣く書くのを止めたけどやっぱり書きたかったから書いたシーン
    来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話~番外編③~色んな人の世話になりながら、39度近くまで上がっていた熱は完全に引いた。今は蓮が診せたという医者に言われた通り、静養期間だ。身体が元気なのに学校にも仕事にもなんなら外にも出れないというのは、中学時代の謹慎中の三日間を思い出す。
    熱がある間は昼間は双葉に、夜から朝は蓮が泊まりがけで付きっきりでそばに居たが、熱が引いたことで蓮はひとまずルブランに返した。
    『こうなったのは俺のせいだから』『お前は放っておくとまた無理するから』と色んな理由を述べられて拒否されたが、ならモルガナを監視役として引き続き家に置くからという妥協案を出すと、渋々承諾した。とはいえ昼間は双葉が家に乗り込んできて持参したパソコンをカタカタといじっている。蓮と約束ノートなるものを作って、それのおかげで一人で外出もできるようになったんだと自慢げに話していた。『明智はわたしの恩人だからな!』と満面の笑みを向けられたときは眩暈を起こしかけたが何とか耐えた。
    9247

    recommended works