紅ロザ紅ちゃんが桜を見に行くお話暖かな風と共に時折ちらちらと桃色の花弁が目の前を通り過ぎていく。ぼんやりとその様を眺めていると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
声の先を見やれば、一面の桜並木から同じ色の髪をした幼子が鈴のような声を弾ませながらぱたぱたと駆け寄ってくるのが見える。その幼子…紅名は息を少し切らしながら、ぽふんと私の腰当たりに抱き着いた。
「ろざ!」
抱き着く紅名を受け止めながら風に遊ばれた髪を撫でて整える。息が落ち着くのを待って「何か見つけたのだろうか」と聞くと、くりくりとした大きな瞳と目が合う。私は彼の、晴れた日の雪の様な色をした瞳が好きだった。
「あのねー、えへへ…ちょっとこっちにきてほしいの!」
小さな手に引かれるまま桜並木を歩く。斜め後ろから見る、まん丸な頭から出ているぴょこ毛が歩を進める度に上機嫌に動く。一面に桜が広がるこの公園は休みの日ではないからか人はほとんどいなく、きっと一人では迷子になっていた。
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