冬の木枯らしがすっかり全身を冷やしてしまった。さながら雪の女王の牢獄に囚われた囚人のごとし。
心まで凍りつきそうな中小走りで家にたどり着いて居間に入ると、「おー、おけーり」とのんきそのものの緩い声に迎えられた。
こたつから顔だけ出した怠惰の象徴みたいな姿勢で、唯一の兄がニッと笑いかけてくる。若干悔しいことではあるが、その笑顔と「おかえり」の声で木枯らしに冷えきった心も体もゆるゆると解けるような気がしてしまった。
「……ただいま」
そう返しただけで、兄は心から嬉しそうな笑顔を溢す。自然に「ああ可愛いな」という気持ちが湧いてくる、そんな自分に少し驚く。
「今ね、俺たちだけだよ」
「そうなのか?」
「ん」
兄がこたつ布団の裾からちょいちょいと手を出して招いてくる。
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