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    supea_rive

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    トラビォンの過去

    理想郷への片道切符理想郷への片道切符

    私は天国でも底辺のスラム街で産まれた。
    昨日までの友は今日の敵。なんて事は当たり前で、奪い奪われ、騙し騙される。弱者は淘汰され、強者のみがその日の生存を許される。そんな世界。
    そのスラム街の人口は決して少なくなかった。次々と人が死んでいくが、次々と人が入ってくる。
    人間どもが憧れを抱いてる天国なんて幻想だ。みんながみんな恵まれた幸せな生活を送れる場所なんて存在しない。
    そんな場所で、私は頂点に君臨していた。
    生まれつき力が強く、才能もあったから。
    しかし、スラム街ではその才なんてまともに育つわけがない。
    指導者もいなければ学ぶ術もない。あるのは死体とゴミの山だけだ。
    このままここで朽ちていくのは嫌だ、と思いながらもどうしようもない現実に半ば諦めつつあった。

    しかしある日、私の人生を変える出来事が起こった。
    両親が、私に服を持ってきた。
    その服は、街を歩く天使たちがみんな着ていた、学園の生徒の証…制服だった。
    心優しい両親。昔から精一杯愛情を注いでくれた。私と妹には貧しい思いをさせまいと自分達のことは二の次で、私たちへ全てを注いでくれた。
    「…こんな、こんなのどこから…!」
    「そんなの気にしなくていいのよ。これで学園に通いなさい。貴方は頭の良い子よ。こんなところで燻っていては勿体無いわ。」
    「…でも…私だけそんなの…」
    「私たちのことは気にしないでちょうだい。大丈夫。妹も時が来たら学園に通わせるわ。お姉ちゃんとして、お手本を見せてちょうだい?ね?」
    「…」
    そこまで言われては頷くしかなかった。

    私は家族と離れ、学園へと通うことになった。幸い、3食付きの学生寮があったので生活には困らなかった。
    身だしなみを整え、礼儀作法に気をつけた。私は周りからは貴族の子どもだと勘違いされるほど見違えた。その時、「他人を欺くことは何て簡単なんだろう」と思ったものだ。
    新しい知識を詰め込むことが楽しかった私は学年でもトップクラスの成績を収めていた。
    神力の扱い方も、元々の才能も相まってどんどん上達していった。

    一年経つ頃には、過去の私は消え去っていた。
    成績優秀者のため、特待生に認定され学費は免除。卒業時に過払い分の費用が還元されると言う。
    周りからは「振る舞いから気品が溢れ出ている、本人は謙虚だから語らないけれどかなりの家の出身にちがいない」と噂されていた。
    学生生活は順調そのものだった。
    そんな私が目指すものは一つ。
    リナ様へ仕え、絶大な権力を持つ四神…
    その権力は凄まじい。四神には法すらも適応外なのだ。何をしても裁かれない。誰も咎めない。
    さらに、忠誠と引き換えに願いをひとつ叶えてくれるおまけ付きだ。
    まあ、そんな天界の民の憧れの的な四神様はそんな簡単になれるものではないけれど…
    私くらいの歳の子はほぼ全員が将来の夢を「四神様」と言うくらいだ。もはや皆が神格視し、自分がなれるなど微塵も思っていない。
    だが私は違う。本気で四神を目指しているし、その夢を掴むための実力もある。
    自惚れているわけではない。今まで積み重ねてきた努力と、これからの計画を順調にこなせば実現するのは可能だ。
    私は入学した時から心に決めていた。偉くなって、家族に楽をさせるのだと。底辺の暮らしを何としても抜け出すのだと。

    そして時が経ち、私は目標を達成した。
    命からがら、四神の1人との決闘に勝利したのだ、
    本当にギリギリで、後一撃でも喰らっていたら私は死んでいただろう。
    その後、任命式を得て私は晴れて四神となった。

    立派な家と多額の富を得て、ようやく、家族全員を養うことができる準備が整った。
    その頃、もうすぐ妹が1000歳の誕生日を迎えることに気づいた。
    学園に通えるようになる歳だ。
    次に会う時は、立派になってみんなを楽させるから、と約束した手前、入学して以来一回も会えていなかった。
    迎えにいこう。今なら胸を張って会うことができる。
    上質な服を身にまとい、誕生日プレゼントを持って私は故郷であるスラム街へ向かった。
    途中何回も追い剥ぎに遭いそうになったけれど、
    私の前ではそんなものは意味をなさない。全員殴り飛ばして先を急いだ。

    しかし、進んだ先で私が見たのは、もぬけの殻となったかつての我が家であった。
    当たり前に、笑顔で家族が出迎えてくれると思っていた。
    しかし、そんなことはなかった。
    周辺の住民を脅し、事情を聞き出した。
    私がいなくなった後、スラム街の治安はさらに悪化した。
    そして、頂点であった私がいなくなったことで、それまで私が押さえつけていた悪党どもがこのスラムを仕切るようになったらしい。
    私への積み重なる恨み、その矛先は家族に向かった。
    両親は見せしめとして手酷く殺され、美しい容姿を持った妹はその悪党集団の慰み者になっていると言う。
    言葉がでなかった。
    気づけば私はその悪党集団の本拠地に乗り込んでいた。
    全員を薙ぎ倒し、やっとのことで再会した妹は虚な目をしていて、精神が壊れてしまっているようだった。
    喋ることもできず、幼児のように意味のない言葉の羅列を発するだけ。
    けれど、どんなことになっていても、妹が生きていてくれて本当によかった。
    私は、妹を自分の家に連れて帰った。
    これからはもう離さない。お姉ちゃんが守るからね。大丈夫だから…
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