××をあなたに ――インドラ神。
優しい声色で、母は彼に語りかける。遠い昔に捨てたはずの息子へと。
許しを請うように、母は続けた。
――私が貴方の元から去ったのは、けして傷つけようとしたわけでも、ましてや私自身のためでもないのです。
ただ私は、神々から向けられるだろう妬みや嫉みから、貴方を守らんとしただけのこと。
邪竜を殺し、今や貴方の恥じるべき過去は雪がれました。完全無欠たる神々の王インドラよ、我が息子よ。
私は、貴方を愛しています――。
◇
千か月を経て彼がこの世に生を受けた時、彼に産着を着せる者はいなかった。特異な出産を恥じた母は、彼を置いて消えたのだ。母の背中を追うこともせず、彼は自ら衣を身に纏って立ち上がった。
3019