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    いさん

    @f45327

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    いさん

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    R15程度(まだその段階じゃないけど)の現パロ
    他の方は出てきません(むしろいない世界線だと思っていただければ)
    捏造妄想幻覚マシマシ
    途中まで もしかしたら失速するかも
    ※書き方(行間や言葉遣い)にちょっとクセがあるので、気になったらごめんなさい

    大学生モリユヒ.




     ガヤガヤと教室の中が一気に騒がしくなる、4時間目終わりの昼休み。机に向かって教科書では無くスマホと向き合う一人の少女は、周りが昼食を食べ始めてもその画面を凝視したままだった。

     その理由はと言うと――先日、彼氏持ちの友人から告げられた「実は彼氏と先に進んじゃったんだよね♡」という発言が原因である。その際彼女は口に運ぶ途中のおかずを、箸からポロリと落としてしまうほど衝撃を受けた。先に……進んだ? ということは、そのつまり、一線を超えたって事………………顔を真っ赤に染めたのは記憶に新しい。そこで彼女――ユヒルは、授業も真面目に聞かずにスマホで熱心に検索していた。そう、『高校生 彼氏 初めて』と。そこで冒頭に戻るというわけだ。

     こんな検索をするなんてお察しの通りだが、ユヒルには半年前から付き合い始めた彼氏がいる。ひとつ歳上で高校3年生の"モリィ"という、高校生には見えないくらい大人びており余裕たっぷりの青年が彼女の恋人である。そんな彼とは手を繋ぎ、まだ触れるだけのキスしかしておらず、健全なお付き合いをしていた。しかし友人の話を聞き、高校生でそこまで進むのかと驚いたと同時に羨ましく思ってしまった。



    (……いやいや、高校生はさすがに早すぎるよね)



     調べてみたところ、個人差もあるが高校生のうちはまだしない人の方が多い。むしろ、責任が取れない学生という段階はリスクがあり、ユヒルにとってもモリィにとっても『今は考えることじゃない』という認識だった。それに、彼はなんというか……そういう欲が無さそうに見えるのだ。キスといった身体接触も、ユヒルがそれを求めていると察した上での行動で、彼自身がしたいからするといったことは今まで1度も無い。あったのかもしれないが、彼女には感じ取れなかった。



    「……もう調べるのはやめよう。私たちには私たちのペースがあるんだし……」



     そう言ってユヒルは、潔くスマホの電源を落とした。――これがおよそ4年前の、甘酸っぱい青春の記憶である。




    ***




    「モリィさん!」
    「……おや。そんなに慌てても、僕は逃げないよ」
    「だって、珍しく見かけたからつい……」



     あれから4年後。2人は長いお付き合いの最中だった。
     モリィは頭も良かったため大学へ進学し、ユヒルも彼と同じ大学へ進学するために猛勉強。その甲斐あってこうして同じキャンパスライフを送れている。とは言っても、1歳差の先輩後輩なので頻繁に見かけたり一緒に移動する事は少ないのだが。4年――数字で見れば短いが、実際にその年数を過ごしてみると結構長い。そんなに長い間付き合っているのだから、もう先に進んでいると思うだろう。しかし2人は未だに清いお付き合いをしていた。ちょうど一年前、自分が20歳になってもまだ"そういう雰囲気"にならないことを痛いほど理解したユヒルは、最近では半ば諦めの状態だった。もうそっち系のことは考えないようにしている。きっと性欲が無いタイプの男の人なのだと、何度も自分に言い聞かせていた。



    「……――ル、ユヒル?」
    「!」
    「僕はそろそろ行かないと。君は?」
    「あ……わ、私もです! 引き止めちゃってごめんなさい。では!」
    「うん。またね」



     モリィはユヒルへ軽く微笑み、流れる動作でふわりと優しく頭を撫でから踵を返した。次第に離れていく彼の背中を見つめながら、彼女は頭を切り替えるために頬をつねる。途中で同級生であろう女の人に話しかけられたのを見たら、無意識に指に力が入ってしまい「痛ッ」と声が漏れた。

     ――彼はモテる。それも4年の年月で痛いほど実感していた。高校のときも頻繁に告白されていたし、何よりユヒルが嫉妬の眼差しを向けられることが多かった。私だって、どうしてモリィさんが自分を好きになってくれたのか分からないのに……と、嫉妬の対象になるたびに困惑する。さっきも頭を撫でてくれたけど、もしかしたら妹のように思われているのでは? と思うことも増えた。そんな事、気にしても仕方ないのに。



    (……嫌な女になってる)



     チクリと痛んだ胸に気付かないフリをして、ユヒルも背中を向けて歩き始めた。


     けれど、その胸の痛みは一晩寝ても、どれくらい日数がかかっても消えてくれない。全てを打ち明けてしまえば楽なんだろうけど、余裕のある彼にそんな幼稚な感情をぶつけるなんて、嫌われそうで怖かった。そもそもこの感情がなんなのかも自分で整理ができていない。そんな状態で勢い任せに話しても、ただ彼を困らせるだけなのは分かりきっている。

     今日はせっかくのお家デート(という名の勉強day)なので、ネガティブな感情に蓋をし、提出期限の迫ったレポートへ意識を向けた。



    「ゔぅん……」
    「……」
    「…………ウーン……」
    「…………何に悩んでいるのかな」
    「あっ!? 声に出てました……?」
    「君が思っている以上にね。レポートについて悩んでる、って訳でもなさそうだし。何かあったのなら、話は聞けるよ」



     真正面に座り首を傾げる麗しい自分の恋人を見て、ユヒルは息が詰まった。……実は、レポートに意識を向けたのに全く集中出来ていないのは確かだった。それもそうで、目の前にいる彼が悩みの種なのだから。感情に蓋をしたつもりだったが、知らないうちに溢れ出ていたようだ。でも本人に言うのは、なんとなく違う気がする。



    「……なんでもないです」
    「そう。なら、もう少し静かに――」
    「やっ……やっぱり、ありました」



     思わず口が滑り、モリィの注意を遮る。怪訝そうな表情を浮かべる彼の顔を見ていられず、太ももの上でギュッと握った拳に目を落とした。



    「ッ、あの、モリィさん」
    「うん」
    「……キスしてくれませんか」
    「――キス?」



     パチ、パチ。宝石が埋め込まれたように煌めく瞳が、今度は困惑した色を浮かべる。はしたないことを言ってしまった自覚があったのか、ユヒルは頬を赤く染めてさらに顔を俯かせる。今こうして不安に駆られた彼女は、彼からの愛情表現を受け取れば気持ちが楽になると思ったようだ。しかしモリィから返された言葉が、彼女の不安をさらに掻き立ててしまう。



    「やるべき事が終わったら沢山してあげるから、今はレポートを進めようか」
    「……今じゃ、…………だめですか」
    「ダメだよ」



     彼はキッパリと言い切る。その途端、情けなさと恥ずかしさ、そして少しの期待が呆気なく散ったことに泣きそうになった。羞恥心で視界がぼやける。今ここから消えてしまいたいほどだった。涙が零れないように力いっぱい目を瞑り、顔を上げた頃にはユヒルは眉を下げて弱々しく笑った。「さっきの、忘れてください」と。モリィも思うところはあったようだが、特にこの話題に触れることはなかった。触れない方が彼女のためだと思ったのだ。

     ……これが最後に会った先週の話である。



    続くよ!
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