ささやかな幸せ 「マティスくん、そろそろ休憩しませんか?」
淹れたてのお茶を運んできた私にぱぁっとマティスくんは表情を明るくさせた。
「ありがとうございます、セレスさん……あれ?今日はお菓子もあるんですね」
「え………あ、はい……その、集中していると糖分を使って、そうすると自然に甘いものが食べたくなる…と、聞いて本当はマルシェで買ってこようと思っていたんですけど…」
「けど?」
「…ジャンさんに、勧められて……」
「勧められて?」
「……って、作って、みたんです……」
「え!セレスさんの手作りなんですか!?このクッキー!」
「……はい」
【死神】と呼ばれる自分にとって、私が作ったから――と私が淹れたお茶や作った料理を拒否されることはよくある。しかしマティスくんはキラキラと瞳を輝かせている。
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