上書きのキス 「い、いーおん……?」
ティファリアの鼓動はまるで心臓を握りつぶしてしまいそうな勢いで大きな音を立て、早鐘をうっていた。顔も真っ赤に染まり、熟れた林檎だと言われても頷いてしまうほどに赤かった。けれどイーオンは止まらない。ルビー色の瞳の中にティファリア、ただ一人だけを見つめながらまたゆっくりと口づけをその証へと向けた。
まるで犬猫がマーキングするかのように口づけを繰り返すイーオンに唇のキスではなく、肌にイーオンの唇が触れているだけだというのにティファリアはキャパオーバー寸前だった。
「ふ……顔が真っ赤だな。ティファリア」
「い、イーオンのせいだもん!」
ぱくぱくと口を開閉させてやっと反論の言葉を口にするティファリアに思わずイーオンは笑みを零す。
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